時間や場所に捉われない“柔軟な働き方”とされるリモートワーク。オフィス勤務とは働き方が大きく異なるため、就業規則をどうするべきか悩んでしまう方も多いです。
また、就業規則の変更が求められる場合、どのポイントを確認すべきなのか知りたくなるかと思います。
そこで今回は、リモートワークの導入による就業規則の変更について詳しく解説していきます。変更するときの手続きや確認すべき4つの規則も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
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リモートワークの種類によって定める就業規則が変わる
就業規則を考える前に、まずはリモートワークの種類について理解しておきましょう。
何故かと言うと、導入するリモートワークの種類によって定める就業規則が変わってくるからです。
なお、外部で作業を行うリモートワークは、以下のような3つの種類に分けることができます。
- 在宅勤務:自宅で作業を行う勤務形態
- サテライトオフィス勤務:他のオフィス・施設で作業を行う業務形態
- モバイル勤務:移動中の交通機関・顧客先・カフェなどで作業を行う勤務形態
適切な就業規則を定めるにも、どのリモートワークを導入するのか明確にしておきましょう。
リモートワークの導入に就業規則の変更は必要?
リモートワークの導入にあたり、労働時間やその他の労働条件が同じである場合、就業規則を変えないままリモートワークを運用できます。
例えば、モバイル勤務を導入して“移動中の作業を認める”とした場合、就業規則を変える必要はないでしょう。(基本的な就業場所や労働時間が変わらないため)
しかし、通常勤務で生じないこと(従業員の通信費負担など)がある場合、新しい就業規則が必要になります。
なお、リモートワークの導入時には、労働時間や賃金を見直すことがほとんどです。なので、基本的には就業規則の変更が必要になると言えるでしょう。
就業規則を変更するには「届出」と「周知」が必要
就業規則を変更するには、従業員代表の意見書を添付し、管轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。
厚生労働省の「テレワークモデル就業規則〜作成手引き〜」には、就業規則の変更について以下のように明記されています。
使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
また、就業規則を変更したときは、従業員に周知することが義務付けられています。
書面を交付したり、従業員のパソコンから確認できたりするようにして、就業規則の変更を知らせるようにしましょう。
リモートワークを導入するときに確認すべき就業規則
基本的に就業規則の変更が求められるリモートワーク。では一体、どのポイントを変更すれば良いのでしょうか?
ここからは、リモートワークを導入するときに確認すべき就業規則を4つ紹介していきます。
- 就業場所
- 労働時間
- 賃金
- 費用負担
在宅勤務をはじめとするリモートワークにも、オフィス勤務と同じように労働基準法が適用されます。
そのため、就業場所や賃金などの就業規則に関しては、しっかりと定義しておかなければなりません。
次の章からは、4つの就業規則を変えるときに確認すべきポイントを解説していきます。
リモートワークの就業規則で確認すべきポイント①就業場所
リモートワークは「在宅勤務→自宅」「サテライトオフィス勤務→別のオフィス」というように、基本的に就業場所が変更します。
なので、就業場所の変更に関する就業規則の変更が必要になります。なお、新しく就業規則を作成するときは、作業を許可する範囲を明確にしておきましょう。
リモートワークは、働く場所を選べる反面「社員を管理しにくい」「情報漏洩のリスクがある」といったデメリットがあります。
「自宅での作業を許可する」など就業場所を明確にすれば、無用なトラブルを避けることができるでしょう。
リモートワークの就業規則で確認すべきポイント②労働時間
オフィス勤務の場合、多くの企業がタイムカードで出退勤を記録しているかと思います。
リモートワークは、オフィスに出社する機会がほとんどないので、どのように労働時間を記録するのか規定しなければなりません。
また、「休憩はいつ・どれくらい取るのか」「残業の申請方法はどうするのか」など、明確なルールを決めておくことも重要です。
基本的にリモートワークは、オンラインでのやり取りとなるので、書面で行う申請(有給休暇など)についても見直すようにしましょう。
リモートワークの就業規則で確認すべきポイント③賃金
リモートワークを導入すると給与・手当の変更が必要になる場合もあります。具体的には、以下のような変更点が挙げられます。
- 通勤手当のカット
- 残業代の削減
- 賞与規定の変更
- 在宅勤務手当
もし、給与・手当に変更がある場合は、具体的な規定を設けることが必要です。
例えば、通勤手当を支給している場合は「週2日までのリモートワークは通勤定期代を支給(3日以上の場合は日数分で計算)」というような規定を設けることもできます。
なお、給与・手当の削減はトラブルを招くこともあるので、社員への説明を怠らないようにしましょう。
リモートワークの就業規則で確認すべきポイント④費用負担
リモートワークを運用するには「通信費」「賃料」「通信機器の貸与」など、様々な費用が必要になります。
原則として従業員のリモートワークにかかる費用は、会社側が負担しなければなりません。
しかし、必要となる費用の中には「通信費」や「光熱費」など、私用と業務の使用分が区別しにくいものもあります。
もし、一部費用を従業員に負担させる場合は、就業規則に定めることが必要です。後々トラブルにならないよう、どちらがどれだけ負担をするのか明確な負担割合を決めておきましょう。
就業規則を変更する際は対象者を明確にすることも大切
ここまで確認すべきポイントを紹介してきましたが、新しく就業規則を作成するときは、対象者を明確にしておく必要があります。
就業規則は“賃金を支払われる者”が対象となるので、会社に雇われている全ての従業員が対象になります。
もし、一部の従業員を対象とする場合は「テレワークを希望する者で勤続年数3年以上」「育児や介護で出勤するのが困難な者」など、具体的な規定を設けるようにしましょう。
まとめ:基本的にリモートワークは就業規則の変更が必要
今回は、リモートワークの導入による就業規則の変更について紹介しました。改めて紹介した内容を簡単にまとめてみます。
- 就業場所や賃金など、原則的に就業規則の変更が必要になる
- 就業規則を変更する場合、労働基準監督署への届出・従業員への周知が必要
- 就業場所→作業を許可する範囲を明確にする
- 労働時間→労働時間の記録方法・残業などの申請方法を明示する
- 賃金→手当の算出方法など具体的な規定を設ける
- 費用負担→費用負担の割合をはっきりさせておく
就業規則を作成するときは、対象者を明確にして具体的な規定を設けることが必要です。
この記事も参考にしていただきながら、自社に合った就業規則を考えてみてください。