あなたは転職を考えて退職し、ハローワークを利用した際に様々な書類を受け取ったかと思います。
その中で『再就職手当』という制度について書かれた資料が目に入りませんでしたか?『再就職手当』は、転職活動中の方は絶対に知っておきたい制度です。
今回は『再就職手当』の基礎知識や必要書類の記入方法、筆者の実体験を元にした“給付金額”や“給付までの日数”などを紹介していきます。
本記事は「ハローワークで渡された資料だと、情報が多すぎてよく分からない!」「詳しく知りたいけど、誰に相談したら良いのか分からない…。」という方にオススメです。ぜひ最後まで読んでみてください。
ちなみに“転職”とは『在職中に就職活動を行い、次の職場に就職を決めること』。“再就職”とは『一度失業状態になってから就職活動を行い、新しい職場に就職を決めること』を意味します。
転職者を支援する再就職手当とは
再就職手当は簡単に言うと「失業者が再就職を決めたときに、ハローワークから受け取れる“祝い金”」のことです。
再就職手当には“失業者に早めの再就職を促す”目的があるので、失業手当を受け取っている期間が短ければ短いほど、貰える金額が増えます。
なぜ早めの再就職を促すのかというと、失業手当を受け取っている人は、『求職活動』への意識が薄まりやすいからです。(実際、筆者はそうでした。)
そこで“再就職を早く決めることが、失業者にとってメリットになる”ように作られた手当が『再就職手当』というわけです。
再就職手当がどんな手当なのかはわかったけど、実際に受け取るにはどうすればいいの?
ということで次の項目では、『再就職手当を受け取るために必要な8つの条件』について説明します。
「8つもあるのか…」と心配する人もいるかと思いますが、ひとつひとつはとても単純な話なので、安心してお読みください。
再就職手当を受け取るためには8つの条件がある
ここでは再就職手当を受け取るための“8つの条件”を簡単に説明します。
条件その①『失業手当の支給日数が1/3以上残っている』
失業手当の給付日数は、失業者によって90日〜360日とバラつきがあります。その給付日数の残りが、全体の1/3以上残っていないと再就職手当を受け取れません。
※気をつけていただきたいのが、あくまで「日数」であり「金額」ではないということ。ちなみに基準となるのは就職日の前日までになります。
条件その②『再就職先で1年以上働く見込みがある』
この条件には『再就職手当を受け取るためだけに、適当な会社に就職してすぐ辞める』という人が出てこないようにする目的があります。
条件その③『待機期間を満了する』
失業手当が受給開始されるまでに、7日間の待機期間がありますよね?その期間中に再就職を決めた場合は、再就職手当を受け取ることが出来なくなります。
条件その④『給付制限期間の1ヶ月目に再就職した場合』
自己都合退職の方は、失業手当を受け取るのに3ヶ月間の給付制限がかかります。
給付制限期間の1ヶ月目に再就職を決めた場合、ハローワークまたは厚生労働省から認可を受けた職業紹介事業者を通した就職でなければ、再就職手当を受け取れません。
つまり、近所の店先で見かけた求人広告や、企業のホームページにある求人情報など、個人的に行った就活による再就職はNGということです。
そもそも厚生労働省から認可が下りないと職業紹介事業自体が不可能なので、企業と個人の仲介役を務める会社を経由した再就職であれば、ほとんどの場合大丈夫です。
また、厚生労働省職業安定局が運営している『人材サービス総合サイト』では、認可済みの職業紹介事業者を検索することが出来ます。心配性の方は検索しておくと安心ですよ。
条件その⑤『再就職先と前職の関係性がない』
こちらの条件は、前職からの紹介で決めた再就職や、前職と関わりがあった企業に就職したときのケースになります。また、前職に再雇用された場合でも、再就職手当を受け取ることが出来ません。
条件その⑥『3年間再就職・常用就職支度手当を受給していない』
常用就職支度手当とは、心身の状態が良くないなどで就職活動が困難だった方が、就職出来た場合に支給される手当のことです。
条件その⑦『受給資格決定前から内定を受けた会社ではない』
ハローワークで失業手当の申請等を申告する前から就活を始め、受給資格が得られる手続きが完了する前に内定が決まった場合も、再就職手当を受給できなくなります。
条件その⑧『雇用保険に加入している』
派遣社員やパート・アルバイトなどの非正規雇用者として採用される場合、雇用保険に加入できる条件で採用されていなければ、再就職手当を受け取れません。
(参考:厚生労働省ホームページQ&Aより【https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000139508.html】)
一番気になる「いくら貰えるのか?」計算方法を紹介
自分は、再就職手当を受け取る条件を満たしていそうだ。じゃあ一体いくら貰えるんだろう?
[box class="yellow_box" title=""][/box]この記事を読んでいるあなたが、一番気になっていると思われる“支給金額”。この項目では、再就職手当の支給金額の計算方法を紹介します。支給金額の計算式は、以下のようになります。
“失業手当の支給残日数×基本手当日額×給付率=再就職手当の支給金額”
残日数の基準は“再就職した日の前日から、失業手当の最終支給予定日まで”です。給付率は残日数によって決まり、支給残日数が2/3以上の方は70%、1/3以上の方では60%になります。
また、基本手当日額は、失業手当を受給する際に設定された、1日あたりの受給金額のことを指しています。
失業手当の残日数が1/3日以上残っていないと、そもそも再就職手当が受け取れないことは、前の項目で説明しましたね。
(参考:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000139508.html)
計算式だけ出されても、いまいちピンとこないなぁ…。
そう考える方も多いと思います。そこで、次の項目では実際に筆者が再就職手当を受給したときに使用した数字を例にして解説しましょう。
再就職手当を筆者が実際に利用したときのケースを紹介
前項目の計算式を、筆者が実際に再就職手当を利用した時のケースに当てはめて紹介します。まず、当時の状況は下記のような感じでした。
- 基本手当日額…5,630円
- 失業手当支給期間…2018年9月26日〜12月24日の90日間
- 就職日…2018年11月12日
- 就職日〜失業手当最終支給日までの残日数…43日
- 給付率…支給残日数が1/3以上・2/3未満なので、60%
上記の情報を、先ほど紹介した計算式に当てはめると《支給残日数(43日)×基本手当日額(5,630円)×給付率(60%)》になります。計算式の答え、つまり再就職手当の金額は《145,254円》です。
給与以外でこれほどの収入が入ってくるのは、失業者にとってかなりの助けになりますよね。
支給残日数が増えるほど当然再就職手当の金額も上がります。さらに、残日数が2/3以上あれば給付率が70%になるので、受給金額はもっともっと上昇します。
「就職を決めるのが早ければ早いほど得をする。」ということの意味が、おわかりいただけましたか?
転職活動終了後、再就職手当はいつ支給される?
計算方法と具体的な金額が把握できたことで、この記事を読む前よりも“再就職手当”という制度が、かなり身近な存在になったのではないでしょうか。
身近に感じてくると、今度は金額と同じくらい気になってくる「“いつ”貰えるのか?」という疑問。この疑問についても、筆者の実体験を含めて解説していきます。
まず、再就職手当を受け取るには、就職日から1ヶ月以内に『再就職手当支給申請書』をハローワークに提出する必要があります。
申請書はハローワークで就職申告をした後に貰えるので、仕事が決まったら早めに申告しましょう。
『再就職手当支給申請書』の提出期限は1ヶ月以内と定められていますが、実際は就職日の翌日から2年間までは申請を出すことができます。
ちなみに申請時には『再就職手当支給申請書』『雇用保険受給資格者証』の2点が必要です。『再就職手当支給申請書』の詳細については、次の項目で説明しますね。
ハローワークに申請書等を提出後、受給資格条件を満たしているかどうかの審査が入ります。審査にはおよそ2週間〜1ヶ月ほどかかり、審査終了後、結果をお知らせする書類がハローワークから自宅に届きます。
審査に合格していれば『就業促進手当支給決定通知書』という書類が届くはずです。そして通達から約1週間後、自分の銀行口座に再就職手当が振り込まれます。
下記に、筆者が実際に経験した『採用から再就職手当が振り込まれるまでの時間経過』を掲載します。あくまで目安ですが、どのくらい時間がかかるのかが把握できますよ。
- 11月5日…採用(就職日は11月12日)
- 11月6日…ハローワークヘ就職を申告
- 11月9日…ハローワークから『再就職手当支給申請書』を受け取る
- 11月12日…就職日
- 11月19日…『再就職手当支給申請書』『受給資格者証』をハローワークに提出
- 11月30日…自宅に『就業促進手当支給決定通知書』が届く
- 12月4日…銀行口座に再就職手当の145,254円が振り込まれる
筆者の場合は『支給申請書』の提出から11日後に『支給決定通知書』が届いていますが、これはかなり早いケースのようです。
ハローワークが繁忙期になると、審査が終了するまでに1ヶ月以上も待たされることもあるのでご注意ください。
『再就職手当支給申請書』の記入方法を紹介
この項目では、再就職手当を受け取るために必要な書類『再就職手当支給申請書』の記入方法について解説します。
(※上記画像は【電子政府の総合窓口『e-Gov』】からダウンロードした画像を、解説のために加工したものです。)
①本人記入欄
あなたの基本的な情報を書き込む欄です。雇用保険受給資格者証の支給番号や、氏名・住所などの個人情報を書き込んでください。
②事業主記入欄
こちらは就職先の事業主に記入してもらう欄です。お仕事が始まったら、1ヶ月以内に記入と押印をお願いしましょう。
注意していただきたいのは『雇用期間』の項目。ここの「1年を超えて雇用する見込み」が“有”になっていないと、再就職手当の受給条件から外れてしまいます。
③本人記入欄
最後も本人記入欄になります。申請内容の確認をする欄なので、申請時の日付と氏名を記入しましょう。
【要注意】転職しても再就職手当を受け取れないケース
再就職手当の受給条件を紹介した項目と内容が若干被るのですが、特に注意していただきたいので、改めて“再就職手当が受け取れないケース”を3つ紹介します。
①雇用保険に加入していない
こちらは大前提になります。正社員だったとしても、手違いなどで雇用保険に入っていなかったというケースもあるので、必ず勤め先に自分が雇用保険に加入しているかどうかの確認をとりましょう。
②支給残日数が不足している
次に気をつけていただきたいのは、“支給残日数の不足”です。支給残日数が1/3を切っていると再就職手当が受け取れないのは先述した通りですね。
特に気をつけたいのは、支給残日数は『就職した日の前日まで』が対象になるということ。支給残日数ギリギリで採用された場合、就職日(初出勤日)の時点で支給残日数が1/3を下回ってしまう可能性があります!
そうなってしまうと、再就職手当の受給条件から外れてしまいます。支給残日数のことを考えても、就職活動は早め早めに行った方が良いですよ。
③雇用形態や期間が支給条件を満たしていない
最後は派遣社員や契約社員といった雇用形態で就職した方が、主に当てはまるケースです。1年以上継続して働く契約でなければ、再就職手当を受け取れません。
しかし「契約更新の可能性がある」場合は、再就職手当の受給対象になります。契約期間が1年未満の方は、更新の可能性があるかどうかを雇われ先に確認しましょう。
ハローワークを通した転職以外でも再就職手当は貰える?
再就職手当ってハローワークにある求人で就職した人しか貰えないんでしょ?
そう思っている方も多いのではないでしょうか。ご安心ください!再就職手当はハローワーク以外の職業紹介業者経由で就職を決めた場合でも、受け取ることができます。
ハローワークに掲載されている求人だけでは、理想の職種はなかなか見つかりませんよね。転職エージェントや職業紹介業者の力を借りれば、それだけ早く理想の仕事につけて再就職手当の金額も増えます。
注意していただきたいのは、職業紹介業者を経由しない場合の就職(例えば会社のホームページにある求人募集ページから直接自分で応募するなど)では、再就職手当が受け取れないということです。
自力で頑張るのも良いですが、状況によってはかなり高額になるのが再就職手当。筆者は絶対に利用するべき制度だと思っています。
転職先で半年間労働すると、更に手当が貰える可能性も!
転職後、同じ職場で半年間継続して労働すると『就業促進定着手当』という制度が追加で受けられます。『就業促進定着手当』は『再就職手当』を受給した方が対象になるので、合わせて覚えておきましょう。
『就業促進定着手当』は『再就職手当』を受け取ってから半年間働いたときの給与が、前職で支払われていた給与の半年分を下回っていないと支給されません。
たとえ自分が希望した通りの会社であっても、研修期間や初年度は給与が少ないことはよくあります。
『再就職手当』や『就業促進定着手当』などの“雇用保険制度”は、あなたの生活を助けてくれるありがたい存在なので、正しい知識で積極的に利用しましょう。
早期転職をお祝いするお金、再就職手当に関する情報まとめ
今回は『再就職手当』の受給条件や手続き方法、支給金額や支給までの日数について紹介していきました。
失業中は時間が自由に使えすぎるので、求職活動がつい後回しになってしまいますよね。実際筆者もそうでした。
しかし『再就職手当』という制度について理解が深まると、「次の仕事は早く決めた方が良い」ということはおわかりいただけるかと思います。
ということで最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この記事があなたの疑問を解決する手助けになったのなら嬉しいです。