あなたは「カサンドラ症候群」という言葉を聞いたことはありますか。職場にこの症例を発症している部下がいるかもしれません。
この記事では「カサンドラ症候群」がどのような症状なのか、万が一に部下がなってしまった場合に備えて対処法を紹介するので、読んでみてください。
※今回紹介するカサンドラ症候群は、正式な病名ではありません。あなたの部下が紹介する症状にあてはまりそうな場合は、病院等で専門家の診察を受けるように勧めましょう。
(トップ画像出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/2313996?title=%E6%AE%BB%E3%81%AB%E9%96%89%E3%81%98%E3%81%93%E3%82%82%E3%82%8B%E3%82%A4%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%B8&searchId=13794214#)
カサンドラ症候群とは?
カサンドラ症候群とは、次のような症状を持っている人のことを示します。
カサンドラ症候群とは、家族やパートナーなど生活の身近にいる人がアスペルガー症候群(現在の診断名は自閉症スペクトラム障害、以下ASD)であることが原因で、情緒的な相互関係を築くことが難しく、心的ストレスから不安障害や抑うつ状態、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などの心身症状が起きている状態を指す言葉です。
(出典:https://snabi.jp/article/86#e4idf)
身近にASDの症状を持つ人がいて、その人と親密に関わっていることが原因で、人間関係を築くことに問題が出てしまい、精神的にストレスを抱える症状を指します。ASDについては、別の章で詳しく説明しますね。
精神的ストレスが大きくなってしまうと、うつ病などの症状を発症し、重症化する可能性もあります。
カサンドラとは、ギリシャ神話にでてくる王女です。未来が見えると彼女が言っても周囲は信じず、彼女が孤立化した話から、カサンドラ症候群という名前がつきました。
カサンドラ症候群でおきる症状は?
カサンドラ症候群にかかると、次のような症状が出ると言われています。
- 偏頭痛
- 倦怠感
- 自律神経失調症
- パニック障害
- 抑うつ状態
- 自己喪失感
※人によって症状は様々ですので、必ずしも上記のような症状がでるとは限りません。
カサンドラ症候群は、パートナーや同僚との意思疎通が上手くいかない→精神的ストレスになる→ストレスが限界を超えるという流れで発症することが多いです。
部下が仕事を休みがちになったり、仕事中も集中せずにぼーっとしていたりする場合は、何かしら精神的に問題を抱えている可能性があります。
どんな人がカサンドラ症候群になりやすい?
カサンドラ症候群になりやすい人は、身近にASDのパートナーまたは同僚がいて、性格が次のような人と言われています。
- 真面目、完璧主義
- 物事をはっきりさせる
- こうあるべきという思いが強い
自分の身近な人とコミュニケーションが取れないと、性格の不一致が原因だと思い込んでしまうようです。周囲に話しても状況を理解してもらえない辛さから体調不良になり、病院に診察に行って原因が判明します。
ASDは発症率は女性よりも男性の方が高く、夫婦であれば夫がASDで妻がカサンドラ症候群になることが多いです。(男性の方が発症率が高い原因は不明です。)
夫婦だけでなく、職場の同僚で同性同士でもカサンドラ症候群になる人はいるので、部下の様子が以前と比べておかしいと思ったら、まずは精神的に何か異常が起きていると疑った方がよいでしょう。
ASDはどんな症状?
カサンドラ症候群と関係があるASDは、一般的に次のような症状を持つ人のことを指します。(この症状にあてはまる人が全員ASDとはなりませんので、必ず専門家の診断を受けてください。)
社会的なコミュニケーションや他の人とのやりとりが上手く出来ない、興味や活動が偏るといった特徴を持っていて、自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群といった呼び方をされることもあります。問診や心理検査などを通して診断されます。親の育て方が原因ではなく、感情や認知といった部分に関与する脳の異常だと考えられています。
(出典:https://www.ncnp.go.jp/hospital/patient/disease06.html)
脳の発達が遅れているわけではないので、知識面では全く問題ない人が多く、一般的に高学歴と言われる人にもASDの症状を持っている人はいます。
ASDの人が持つ特徴として一般的に次のようなものが挙げられます。病院での診断の基準とされるものです。
- 空気を読む、察することが苦手
- 相手の立場に立って物事を考えることが苦手、共感性が低い
- マイペースに行動することが多い
- 言葉をそのままに受け取る(あいまいな言葉が通じない)
- 記憶力が抜群に良い
- 予定外の行動に慌てる
ASDの人は、対人関係で問題が起きることが多いですが、一方でルールやマニュアル通りに物事を進める能力が高いです。
さらに、物事への関心が強い、記憶力が高い、正確性がある、など優れた部分があるので、専門知識を活かせる分野では大変重宝されることがあるでしょう。
部下をASDと決めつけてはいけない
カサンドラ症候群になった部下と深く関わっている人に、ASDにあてはまる症状があったとしても、その人をASDと決めつけてはいけません。
もしあなたが「自分は健康だ!」と自覚していたのに、いきなりASDだと決めつけられてしまったら、どのように感じますか。不愉快になったり、差別を受けたと感じたりしませんか。
本人をASDと決めつけてしまうと、ショックで仕事を辞めてしまったり、組織に反抗的な態度を取ってしまったりする可能性があるでしょう。
もし、部下の行動にあてはまるものがある場合は、まずは本人に自覚症状があるのか確認をすることが大事です。自覚症状が無い場合は、組織の事情を話して診断を受けてほしいことを伝えましょう。
複数の医療機関で診断を受けて判断してもらう方が、正確な判断ができる可能性があります。医師の診断を受けずに勝手に判断しないように注意しましょう。
部下の特徴を理解することが大事
ASDは次のような特徴を持っていて、仕事をしていく上ですべてマイナスに働くとは限りません。その特徴が仕事と相性が良いと、周りも驚くような成果を出すことがあります。
- ある特定の物事に対して強いこだわりや、集中力を見せる
- 空気を読んで行動することが苦手
- 共感性が低い
※ASDの人は、一般的には上記のような特徴を持っていると言われますが、空気を読んで行動することが得意なASDの人もいます。
物事のこだわりや興味が強いので、周りが驚くような集中力を見せますが、食事を忘れたり際限なく続けたりすることがあるでしょう。
周囲がASDの特徴を理解し仕事を回していくと、以前よりも生産性が上がったり、売上が上がったりする成果が研究で証明されています。
上司のあなたが、部下の特徴を知り、対処法を把握することが大切です。どのような問題が起きやすいか、本人と共有しておけば、事前に注意点を部下に周知しやすいでしょう。
部下のカサンドラ症候群の解決は第三者が入ることが大切
カサンドラ症候群の解決で一番大切なのは、必ず第三者が入ることです。実はASDの部下の症状が、カサンドラ症候群の部下と一緒のときだけ出ることがあるのです。
周囲から見ると、ASDの症状が出ていないように見えるので、カサンドラ症候群の部下が何に苦労しているのかを理解できず、孤立する原因を作ってしまうのです。
そのため、必ず医師等の専門家や上司、周囲が入って、どのような行動が原因で部下がカサンドラ症候群を発症したのか確認してください。
ASDの部下も自覚症状が無くて、他人からの指摘で気づく可能性もあるのです。本人達で解決させず、第三者を入れて話し合うようにしましょう。
カサンドラ症候群の部下の治療が進めるためには?
カサンドラ症候群は、最初は偏頭痛などの症状を治療するために薬を服用しますが、病気ではないので薬で治りません。最後は部下自身に解決策を見つけさせる必要があります。
カサンドラ症候群の部下には、まずはASDの人がどのような考えで動いているのか理解してもらうことが重要です。カサンドラ症候群を発症する原因は、意思疎通がうまくいかないことでした。
お互いの行動原理を理解し、歩み寄る姿勢を作ることが必要になるでしょう。または、作業をする上でのルールを作ることも有効です。
部下同士の距離を離すためにどちらかを異動させるのは、一時的な解決策にしかならないので、簡単に解決する問題だと考えずに部下をサポートしていきましょう。
自助グループや意見交換の場を利用させる
カサンドラ症候群の人は、周囲に自分の立場を理解してもらえない辛さから精神的孤独に陥りやすいです。自分の感情を共感できる仲間がいる居場所を提供してあげることが大切です。
現在はカサンドラ症候群を抱えた経験を持つ人達の自助グループや、インターネットの意見交換の場があります。部下にはこのような場に参加することを勧めるのも1つの解決方法です。
繰り返しになりますが、ASDの部下と距離を置いたり、異動させても根本的な解決にはなりません。
カサンドラ症候群の部下が、今度再び似たような状況になっても自分で解決できるように対応策を身につけることも大事でしょう。
部下が退職してしまうのが一番悪い解決方法
一番悪い解決方法が、ASDの部下または、カサンドラ症候群の部下が退職してしまうことです。退職を決意させてしまうのは、どちらにも適切な対処をできていなかったからです。
あなたが、ASDの部下の対処を1人に任せてしまったり、適切な仕事を振り分けなかったりすると、部下は「この人は自分の悩みを真剣に考えていない。」と思ってしまうでしょう。
どちらかが退職すれば、問題が解決する可能性もありますが、根本的な解決にはなっていません。似たような問題が別の部署で起きる可能性もあるのです。
同じ問題を繰り返さないためにも、部下が退職しないように、それぞれに適切な仕事と対処法を準備しておくことが大切です。
部下がカサンドラ症候群になってしまったら… まとめ
今回は部下がカサンドラ症候群にかかってしまった場合の対処法を紹介しました。真面目な人ほど、この症状にかかりやすいため、普段から部下の様子に異変が無いかチェックしておきましょう。
事前に対処法を組織で共有しておき、常に部下の仕事をサポートできるようにしておくことが大事です。このときには、ASDの部下にもどのような特徴があるのか自覚させる必要があります。
また、カサンドラ症候群の部下と関わりがあった人を病気と決めつけず、必ず病院の診断を受けることを勧めましょう。ASDの中には、人間関係を築くのが得意な人もいるので、特徴は人によってバラバラです。
一番大切なのは、ASDの部下がいても、組織が上手く回るようにあなたがコントロールすることです。部下からカサンドラ症候群が出ないように、組織全体でサポートし合える状態を作るようにしましょう。