「役職定年とはどういう制度?」「役職定年になったら給料はどうなるの?」このような悩みや疑問を抱いていませんか?
会社の人事制度である役職定年。この役職定年について知らなければ、突然の通告に頭が真っ白になるかもしれません。この記事では、役職定年の実情や役職定年で給料が減るのかについて解説します。
役職定年がある会社にお勤めの方は、ぜひこの記事で知識をつけてその時に備えてください。
役職定年とは
役職定年とは、一定の年齢に達した社員を役職から外し、一般職にする人事制度をいいます。例えば、人事部長が55歳になったら人事部の一般社員になるイメージです。
役職定年制度が始まったのは、1986年に「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」が制定され、60歳定年が努力義務になったことがきっかけです。
それまでの定年は55歳でしたが、60歳になったことで、企業は今までより5年分多くの人件費や福利厚生費を払う必要に迫られました。
そこで企業は、「役職を外して一般社員にすることで少しでも人件費を削る」ことで人件費削減に着手。それが、役職定年の始まりです。ぜひ、どういう経緯で役職定年が始まったのか覚えておきましょう。
役職定年を告げられるのはどの職位から?
役職定年と一括りにしても、「どの職位から役職定年になる?」と思いますよね。少し古いですが、人事院が発表した統計結果を添付します。
企業規模/項目 | 部長級 | 部長級 部長級のみ |
部長級 課長級あり |
課長級 | 課長級 課長級のみ |
不明 |
規模計 | 83.7% | 2.4% | 81.3% | 88.3% | 6.9% | 9.4% |
500人以上 | 94.0% | 2.7% | 91.4% | 94.9% | 3.5% | 2.4% |
100~499人 | 81.5% | 0.6% | 80.9% | 90.5% | 9.6% | 9.0% |
50~99人 | 81.1% | 6.1% | 75.0% | 78.7% | 3.7% | 15.2% |
役職定年制度がある企業のうち、部長級を役職定年の対象としているのは83.7%、課長級を役職定年の対象としているのは88.3%でした。
この結果から、課長以上の職位だと役職定年の対象となるケースが多いことが分かります。
今の自分の職位が役職定年に当てはまるか会社の規則などで確認しておきましょう。
役職定年を告げられるのは何歳?
役職定年を告げられるのは、何歳なのでしょうか?こちらも、人事院が行った役職定年の年齢に関する調査結果を添付します。
企業規模/項目 | 55歳未満 | 55歳 | 56歳 | 57歳 | 58歳 | 59歳以上 | |
部長級 | 規模計 | 1.2% | 38.3% | 10.9% | 24.8% | 16.5% | 8.2% |
500人以上 | 1.2% | 35.7% | 13.7% | 20.5% | 22.2% | 6.6% | |
100人~499人 | 0.8% | 37.4% | 9.9% | 25.3% | 19.2% | 7.3% | |
50人~99人 | 2.0% | 42.3% | 10.6% | 27.5% | 5.7% | 11.9% | |
課長級 | 規模計 | 6.8% | 45.3% | 14.0% | 16.1% | 10.7% | 7.1% |
500人以上 | 11.8% | 43.3% | 15.1% | 13.1% | 11.6% | 5.2% | |
100人~499人 | 5.9% | 45.7% | 12.3% | 16.8% | 13.1% | 6.3% | |
50人~99人 | 4.7% | 46.3% | 17.5% | 16.7% | 3.8% | 11.0% |
部長・課長クラスとも約36%~46%の企業が55歳で役職定年と回答しました。55歳といえば、過去の定年年齢に当たります。やはり、過去の慣習に基づいている企業は多そうです。
また、その次に多いのは57歳となっています。55歳と60歳との間ということで、役職定年を設定しやすい年齢でもあります。
あなたの企業に役職定年があれば、何歳で告げられるのか会社の規則などで把握しておきましょう。
役職定年でどのぐらい給料は変わるの?
役職定年になって一番怖いのは、給料への影響ではないでしょうか。こちらも、人事院の調査結果をご覧いただきましょう。
企業規模/項目 | 変わらない | 下がる |
規模計 | 8.8% | 82.5% |
500人以上 | 11.2% | 86.1% |
100人~499人 | 10.4% | 81.5% |
50人~99人 | 3.6% | 82.2% |
年収水準ですが、役職定年前に比べて下がっていると答えた企業は全体の80%にものぼりました。
役職についているとそれだけ責任も増しますし、部下の統率もしていかなければなりません。役職の人が一般職より対価が大きいのは当然のことです。
一方、給料水準が変わらなかったと答えた人も10%弱います。自分の企業の役職定年で給料はどう変わるのか、会社の規則などで確認しておきましょう。
役職定年後のモチベーションの維持方法
上述したように役職定年は、「定年間近で責任ある役職を解かれ給料が減ってしまう」労働者にはつらい人事制度です。
それゆえ、労働意欲の低下がおこりやくなり、その後の会社人生にも暗雲が立ち込めてしまいます。役職定年後のモチベーションを維持する方法は、以下の2つです。
- 初心にかえる
- 後進の育成に従事する
役職定年後は、一般社員として新しい仕事が待っています。新しい仕事には新しい発見や出会いがあり、刺激がある毎日です。
ぜひ、初心にかえったつもりで新しい業務に励んでいきましょう。
役職定年によって新しく役職についた人は、経験も不足しており判断に迷うことも。
その際に、あなたがアドバイスや助言をすれば、その人にとっても会社にとってもメリットしかありません。あなたの経験や知識を後進の育成に活かしていきましょう。
企業側から見る!役職定年を行うメリット①人件費削減
働く側からしたら、ショックな役職定年。しかし、企業側からすると、役職定年は人件費を削減できるチャンスです。
もともと役職定年は、企業が人件費を削るためにできた人事制度です。
55歳になって役職を解けば、60歳定年で役職を解くより5年分の人件費を削減できます。例えば、55歳で800万円払っていた給料を役職定年させて650万にすれば、5年間で750万削減できます。
働く側として給料が下がるのは痛いですが、企業側からしたら大義名分で人件費を削ることができるのです。
企業側から見る!役職定年を行うメリット②若手登用のチャンス
主に、人員規模が大きい企業ほど役職定年を行っています。これは、役職定年を行うことで企業内の代謝が良くなり、若い人の登用を行いやすくなるからです。
企業規模が大きい会社ほど、一つのポストに複数人が待機をしています。
一人が役職に就いても、その人が定年まで役職にいれば、若い人にチャンスが巡ってきにくくなります。
役職定年があれば、一定の年齢に達すると役職から外れるので、若い人でも役職に就きやすくなるのです。役職定年は、企業の若手登用のチャンスになります。
企業側から見る!役職定年を行うデメリット
企業にとって役職定年はメリットが大きいですが、デメリットもあります。それは、役職定年後の労働意欲の低下です。働く側だけでなく、企業側から見ても労働意欲の低下はデメリットになります。
一番の懸念は、新しく役職に就いた人の指示を聞かなかったり、逆に命令したりしてしまうことです。
言い方は悪いですが、一般社員は上司に使われるので、一度役職に就いている人だと我慢できずに反抗因子になる恐れも。
それでは、新しく役職に就いた人や他のスタッフにまで悪い影響を及ぼしかねません。役職定年した人が反抗因子になった場合、会社としてどう対応していくか考えておきましょう。
役職定年を告げられたら転職もあり?
役職定年を告げられたら転職も視野に入れてみましょう。もちろん、50歳を過ぎた転職活動は相当大変ですし、給与水準が維持されるか分かりません。
しかし、企業の役職に就ける人はそう多くないので、役職で働いていた経験は他の企業でも重宝します。実際に転職活動をする際は、同業他社で探しましょう。
業界が同じなら、○○企業の部長をしていただけで採用になるかもしれません。働きながら転職活動を行えば、転職活動に失敗しても今の会社で雇用は維持されます。
ぜひ、自分の経験や知識を外の世界で試してみてはいかがでしょうか。
まとめ 役職定年は辛い人事制度だが新しい挑戦にはもってこい
最後に、今回の記事でお伝えしたいポイントを振り返りましょう。
- 役職定年は定年制度の引き上げに伴って生まれた人事制度
- 役職定年後の給料は減る場合がほとんど
- 役職定年後は、初心にかえって、後進の育成に従事する
- 役職定年を告げられたら転職するのも一つ
役職定年は、一定の歳になったら役職を解かれてしまうものですが、前向きに捉えると新しい挑戦のきっかけにもなります。
違う業務を行ったり、後進の指導に当たったりすれば自分の経験を伝えられますし、新しい発見にもなります。
また、外で自分の価値を試すのも手です。ぜひ、人事制度に対して下を向くことなく挑戦していってください。