今回の記事では、理学療法士のキャリアアップについて、まとめました。
理学療法士は、そもそもいくらくらい給料をもらっているのか、キャリアアップを考えるときに必要なことは何か、そしてキャリアアップの方法には何があるのかをまとめてあります。
そもそも何を持ってキャリアアップなのかは、人それぞれだと思いますが、この記事では、給料にフォーカスしてキャリアアップの話をしています。ぜひ最後まで目を通してみてください。
理学療法士の給料はどれくらいなのか?
キャリアップを考える前に、一般的に理学療法士がどれくらいの給料をもらっているのかは、押えておきたいです。
理学療法士(作業療法士を含む)の平均年収は、男女ともに、約400万円(ボーナスを含む)です。
ただし、20代前半の平均年収は、約310万円(ボーナスを含む)、20代後半は約370万円(ボーナスを含む)となっています。理学療法士は、初任給は高めの業種となっていますね。
下のグラフでは、世代別の月収の推移を示しています。理学療法士は男女で給料の差があまり無いので、グラフでは男性のみとなっています。
理学療法士は、近年養成校が増えた影響で、20代、30代の若い人が多く、平均年収を下げている状況です。
年齢が上がるにつれて給料が上がっていく理学療法士ですが、一般病院で仮に30年の経験があっても最高で月収36万円となると、必ずしも高い給料とは言えません。
理学療法士の将来性
2025年には、人口割合が大きい団塊の世代(1947年〜49年生まれ)が後期高齢者の75歳になります。当然、リハビリを受ける患者も増えることが予想され、今後も必要な仕事であることは間違いありません。
仕事がなくなることはありませんが、年々有資格者が増えている現状があり、需要と供給のバランスを考えると、理学療法士は年を追うごとに飽和していくでしょう。
また、2042年以降には、リハビリ対象の多くの高齢者人口が減少していきます。その頃には、タブレットやウェアラブル等のITデバイスによるリハビリが一般的になっているでしょう。
在宅リハビリ、予防リハビリが増えて、理学療法士が直接関わる頻度が少なくなると予想されます。そのため、理学療法士の将来は、明るいとは言えないのが現状です。
理学療法士の給料が上がりにくい理由
この記事を読んでいるあなたは、理学療法士として成長して、できれば給料もたくさんもらいたいと思っていることだと思います。
しかし、理学療法士としてはスキルが上がったとしても、給料のアップは伴わないことがほとんどです。多くの理学療法士の方は、自分でセミナーや学会に参加したり自己研鑽をされています。
ただし、多くの会社(病院)では、そういう努力がなかなか給料のアップに繋がらないのが残念なところです。良いリハビリをしても普通のリハビリをしても、制度上同じ○単位○円と決まっています。
国が給料が決めている理学療法士のような仕事は、市場原理と関係なく、治療成果と給料が連動していないため、給料は上がりにくいシステムになっているのです。
あまり期待しない方が良いキャリアアップの仕方
多くの理学療法士の方は、どこかの病院や施設などに所属して働かれていることだと思います。その会社内でキャリアアップするのも一つのやり方ですが、その道のりはとても長いです。
会社内で出世して、技師長を目指すのはやめた方がいいかも
どの病院や施設でも技師長は一人です。それに実力というよりも年功序列の世界なので、なれたとしても早くて40代、大体が50代でしょう。ちなみに、50代の平均年収は、約530万円です。
レースにもなっていない出世レースに参加するのは、辛いでしょう。
認定・専門理学療法士の取得は給料には関係ない
認定・専門理学療法士とは、10年ほど前に、作られた理学療法士協会独自の制度です。勉強して一定の基準を満たした人に与えられる証になります。
ただし、これを取ったからといって待遇が変わることはありません。なぜなら、認定理学療法士だからといってリハビリの単価が上がるわけではないからです。
協会の方では、認定・専門理学療法士の人員配置基準を設ける等の案はあるようですが、医療介護制度自体が変わらないといけない話ですので、実現は遠くなりそうです。
しかし、認定・専門理学療法士になることで、学会の座長を依頼されたり、執筆依頼があったりするようなので勉強面では良いことだらけですよ。
キャリアアップを考えるときには、自分の実績を作る意識をもとう
次の見出しで紹介していくキャリアアップを実現していくためにも、自分がどんな成果を出してきたのかを、見える化する必要があります。
あなたの治療技術や治療の考え方は、素晴らしいものですが、目に見えないし、患者さんが退院したらその成果は、消えて無くなってしまいます。それを、他の人が見てもわかるようにしましょう。
症例報告や研究報告などは、一生形に残るポートフォリオです。また、ブログでリハビリに関する記事をまとめることも一種のポートフォリオです。
このポートフォリオがあることで、自分のスキルや頑張ってきたことをアピールできます。
前提として、きちんと評価してくれる会社を選ぶこと
理学療法士としてキャリアアップする前提として、きちんとあなたを評価してくれる会社を探しましょう。
評価してもらうためにも、一つ前の見出しで説明したポートフォリオを用意する日々の努力は必要になっていきます。
数は少ないですが、認定・専門理学療法士であることを評価して給与に反映してくれるところもあります。実績を評価してくれるところは、医療法人よりも株式会社であることが多いですよ。
理学療法士のキャリアアップ①少数派の領域に転職する
理学療法士の領域は、中枢疾患、運動器疾患、呼吸器疾患などが一般的です。成人〜高齢者までの身体障害へのアプローチが多いはず。
そこで、あえて理学療法があまり浸透していない分野で働いてみることをおすすめします。
この分野で一定の成果を出すことでその分野での有識者として、活躍する未来があるかもしれません。もちろん興味があることが大前提です。
自閉症など発達障害児・者への理学療法
自閉症などの発達障害は、こだわりやコミュニケーションの障害等が目立ちますが、ベースとして体の発達が未熟であるケースが多いです。この領域は、理学療法士が参入する価値が十分あります。
普段子どもが遊んでいる活動の中で、理学療法的な観点から、体の発達や体の使い方の習熟に介入することで、子ども成長をサポートすることができます。
各県の療育センターや一般病院の小児外来だけでなく、近年は児童発達支援事業所や放課後等デイサービスなど、理学療法士が働く場所は増えてきていますよ。
統合失調症などの精神疾患患者への理学療法
精神科病院には、長期入院している患者さんが多いです。例えば、統合失調症の診断があって50年くらい入院している方もいます。近年は、薬がよくなって早期に退院できる方が増えてきたようですが。
長期の入院生活をしていると、身体活動は低下し虚弱(フレイル)に陥ることケースも多くあります。そういう患者さんへの運動指導をしている理学療法士はいます。
また、精神科患者さんは、幻覚や病的な妄想など独特な思考を持つ方が多く、一人ひとりの特殊な認知の仕方に配慮した理学療法がする必要がありますよ。
理学療法士のキャリアアップ②自由診療のクリニックに就職する
近年、自由診療のリハビリクリニックが徐々に増えてきてます。一般的な病院と違うのは、保険が効かないので、患者さんのリハビリの自己負担額が大きいところです。
理学療法士からすれば、自分の実力がダイレクトに評価されます。もっと「この理学療法士にリハビリしてもらいたい!」と思ってもらえれば、何度もオーダーが入るでしょう。
そうなれば、評判が上がるほど自分の報酬に直結します。一般的な病院外来だと、月に受けられるリハビリ回数は制度上制限があり、患者さんの中には、「お金をかけてでもリハビリを続けたい!」という方もいるんです。
まだまだ数は少ないですが、これから増えてくる予想される自由診療のリハビリクリニックを転職先の一つとして考えてみてはいかがでしょうか。
理学療法士のキャリアアップ③別の業種に転職する
資格を有効活用して病院等で「理学療法士」という名目で働くことがほとんどですが、「理学療法士」は単なる資格の一部として、別業界で活躍するキャリアアップをする方法もあります。
例えば、リハビリプランを考えてくれるアプリ、ARやVRを使った認知と体のリハビリデバイスなどを、作る企業に就職してみることも良いでしょう。
予防医療に注目が集まる昨今、ITとリハビリを掛け合わせた商品を輩出する企業が増えてきています。スタートアップ企業に多いです。
リハビリ製品を開発する段階で、専門的なアドバイスをしたり、現場で働いてきた経験を生かしてリハビリ製品の営業販売に生かしている方もいますよ。
理学療法士のキャリアアップ④研究者になる
次に紹介するキャリアアップの方法は、研究者になる道です。研究者になるには、大抵は博士課程を卒業していることが必要です。経験年数よりも、今までどんな論文を書いてきたのか、その実績がかなり重視されますよ。
できれば、英語論文を投稿していると評価が高いです。投稿する雑誌には、それぞれインパクトファクター(IF)という点数が決められているんです。この点数が高いほど、論文の質が高いということになります。
ちなみに、「Society Of Physical Therapy Science」という日本の理学療法雑誌の英文版のIFは0.760 とかなり低いです。
他の理学療法関連の雑誌では、IF3.0以上の高いものあるので、よく調べてできるだけIFの高い雑誌に投稿しましょう。
理学療法士のキャリアアップ⑤起業する
最後に紹介するキャリアアップの方法は、起業することです。理学療法士の方がよく行っている起業を2つ紹介します。
通所デイサービス等の福祉施設を起業する
介護保険法を使った福祉施設の起業のパターンが最も多いです。福祉施設の種類としては、高齢者の通所デイサービス、訪問看護ステーション、児童発達支援事業所など様々あります。
起業しはじめの頃は、会社の経営を行いつつ、自分自身も一スタッフとして管理者等をしながら利用者さんへのサービスを行っていくことかと思います。
整体院を起業する
「理学療法」は医師の指示の元でしかできないので、起業しても「理学療法」を提供することができません。しかし、理学療法のスキルを用いて、「整体」という民間療法を施すことができます。
具体的には脊椎や骨盤、肩、股関節などの関節のゆがみを手技によって矯正し、骨格筋の調整を行うことが多いです。実力と評判があれば、お客さんのリピーターは増え新規も増えてきますよ。
ちなみに、整体院に似たようなもので、接骨院やあん摩マッサージ指圧院、鍼灸院などがあります。
これらはそれぞれ国家資格である柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師が開業を許されている事業となります。理学療法士がこれらの名称を用いて開業することはできないので注意が必要です。
まとめ
今回の記事では、理学療法士のキャリアアップ方法、給料や将来性などを紹介しました。
理学療法士は、病気などでつまづいた患者さんの人生を後押しするとっても素晴らしい仕事ですし、患者さんが少しでもよくなるように勉強されている方も多いです。
せっかく勉強されているのですから、インプットだけなくアウトプットもして実績を残すことで、今後のキャリアアップに役に立てて欲しいです。
今回の記事を通して、患者さんの人生だけでなく、あなた自身の人生のキャリアアップも合わせて考えるきっかけになってもらえたらと思います。