「終身雇用制度って崩壊してるの?」「終身雇用の企業に転職すると、どんなメリット・デメリットがあるのかな?」
日本において安定とされていた「終身雇用制度」ですが、近年は働き方が多様化し、制度の在り方も変わりつつあります。ですので、転職する前に今一度、終身雇用制度について見直しておくことが必要です。
そこで今回は、終身雇用制度の基礎知識からメリット・デメリット、そして“終身雇用の崩壊”ついても解説します。この記事を読めば、あなたが取るべき行動が理解できるようになるので、ぜひ参考にしてみてください。
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転職する前におさらいしよう!終身雇用制度の基礎知識
終身雇用制度とは、企業が定年の年を迎えるまで正社員を雇用する制度のことです。名目上では「制度」となっていますが、厳密には“慣行”という方が正しいでしょう。
終身雇用制度の原型は戦前にありますが、本格的に普及されたのは第二次世界大戦後からになります。
戦後の混乱・貧困にあった労働者が、まず生活の安定を求めたこと、そして訪れた高度経済成長期を背景に、現代のような終身雇用や年功序列が定着していきました。
多くの企業が導入してきた終身雇用制度ですが、実は法的な義務がありません。そのため、年功序列を基本とする終身雇用ではなく、運営方針に合わせて「成果主義」を実施している企業も見受けられます。
終身雇用制度を導入している企業に転職するメリット
転職先に安定を求めているとき、多くの方が「終身雇用制度」を思い浮かべるでしょう。
では実際に、終身雇用の企業に転職することで、どのようなメリットを得られるのでしょうか。主なメリットとして以下の3つのポイントが挙げられます。
- 定年までの雇用が保障される
- 安定した収入を得られる
- 精神的にも安定しやすい
定年までの雇用が保障される
終身雇用の企業に転職すれば、基本的に退職するまで雇用が保障されます。
余程のことがない限りは解雇される心配がないため、長期的な人生設計を立てやすいメリットがあります。
安定した収入を得られる
終身雇用制度の場合、定年を迎えるまで安定した給与を得ることができます。
更に終身雇用の企業は「年功序列」が一般的であるため、働き続けることで給与が上がっていくメリットもあります。
精神的にも安定しやすい
前述したように、終身雇用の企業に転職した場合、安定した雇用と収入を得られます。
その結果、自分の居場所を確保でき、将来に対する不安も少なくなるため、精神的にも安定しやすいと言えます。
終身雇用制度を導入している企業に転職するデメリット
メリットばかりに思える終身雇用制度ですが、いくつかデメリットも存在します。特筆すべきデメリットとして以下の3つのポイントが挙げられます。
- モチベーションを保つのが難しい
- 若手社員が評価されにくい
- 長時間労働になりやすい
モチベーションを保つのが難しい
終身雇用の企業は、定年までの雇用が保障されているため、仕事に対する緊張感や危機感が薄れやすいです。
そのため、モチベーションを保つのが難しやすく、努力を怠ることで実力が伸び悩むケースもよくあります。
若手社員が評価されにくい
転職先にもよりますが、終身雇用制度を導入している企業は、基本的に「年功序列」になります。
いくら成果を上げたとしても「年齢が若い」「勤続年数が短い」という理由から、納得のいく評価を受けられない場合があり、若手のうちは給与が低くなることも少なくありません。
長時間労働になりやすい
終身雇用の企業は、人材の入れ替わりが少ないこともあり、必要最低限の人数を雇っている場合が多いです。
少数精鋭で対応する場合、1人が受け持つ仕事量が多くなるため、長時間労働の温床になります。
終身雇用制度は崩壊寸前?経済界のトップの発言
戦後から続いてきた終身雇用制度ですが、近年は「いずれ終身雇用は崩壊する」という意見が強まっています。
実際にトヨタ自動車株式会社の豊田章男社長は、2019年に「なかなか終身雇用を守っていくというのは難しい局面に入ってきたのではないかと」と述べています。
(参考:https://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/000154403.html)
また、日立製作所社長や経団連会長を歴任した中西宏明氏は、2019年に「制度疲労を起こしている。終身雇用を前提にすることが限界になっている」と発言していました。
(参考:https://www.asahi.com/articles/ASM575TKSM57ULFA02N.html)
本来、終身雇用制度は“日本経済の成長を前提とした制度”であるため、経済が低迷している現状とは逆行していると言えます。
また、少子化により若年層の労働人口が減っていることもあり、ミドル層の従業員が増えることでコストの高騰が懸念されています。
そのため、多くの企業が「終身雇用制度を持続するのは難しい」と考えているのです。
今も尚、終身雇用制度を導入している企業はありますが、“いずれ終身雇用は崩壊する”と考えておく方が賢明でしょう。
転職する前に知っておきたい終身雇用制度の現状
前章では「終身雇用制度は維持するのが難しい状況」と解説しましたが、実際に終身雇用の現状はどのようになっているのでしょうか。
2019年に実施された日本経済新聞の『社長100人アンケート』では、72.2%の企業が「年功賃金を見直す」と回答していました。
尚、年功賃金を見直す理由として「優秀な若手や高度な技術者などを処遇できない」という意見が76.9%と最も多かったです。
(参考:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53807340V21C19A2TJ1000/)
上記の結果を見る限り、多くの企業が終身雇用の評価制度に対して「否定的」に捉えていることが分かります。
また、リクルートワークス研究所の『全国就業実態パネル調査2021』では、これまでの退職回数が調査されており、退職経験者の割合が64.5%となっていました。(在学中・退職回数0回の人を除いた割合)
(参考:https://www.works-i.com/research/works-report/item/jpsed2021data.pdf)
経済が不安定なこともあり、終身雇用制度を支持する人は多いですが、実際に退職する人が多いのもまた事実です。
企業側の考えや退職者の多さを考慮すると、「既に終身雇用は崩壊しつつある」と言っても過言ではないでしょう。
終身雇用の崩壊に備えてやるべき3つの対策
終身雇用が崩壊してきている今、単に転職するだけでは“本当の安心・安定”を得ることは難しいのかもしれません。
では一体、転職を考えている人は“安心・安定を得る”ために何をすれば良いのでしょうか。これからやるべき対策として以下の3つが挙げられます。
- スキルやキャリアを積み上げる
- 今後の成長が見込める企業に転職する
- 仕事を1つに絞らずに副業もしていく
上記の対策をしておけば、終身雇用が崩壊した時代でも“長期的な安心・安定”を手に入れやすくなるでしょう。
次の章からは、それぞれの対策について詳しく解説していきます。
対策①スキルやキャリアを積み上げる
終身雇用の崩壊が進んでいる中、安定を手に入れるために必要になるのが「スキル・キャリア」です。
転職する際にも重要なスキルとキャリアですが、より必要性が高まる理由として以下の2つが挙げられます。
- 成果主義の企業が増えていく可能性があるから
- 自分の居場所を確保しやすくなるから
成果主義の企業が増えていく可能性があるから
近年は、従来の終身雇用・年功序列を廃止し、成果主義を実施する企業が増えています。
その理由は、終身雇用制度では若い世代の能力や成果を評価しづらく、「正当な評価を受けたい」と考える若手層との価値観にズレが生じてしまうからです。
もし終身雇用が崩壊した場合、勤続年数による給与アップが期待できなくなります。
つまり、能力がない人材は評価されにくくなるので、スキルアップや実績を残すことが重要になると言えます。
自分の居場所を確保しやすくなるから
終身雇用制度が崩壊すると、定年までの雇用が保障されなくなるため、自分で自分の居場所を確保しなければなりません。
しかし、優れた能力と実績がある人は“必要な人材”と判断されやすく、業績が悪化した場合でもリストラの対象になりにくいです。
また、周りと差別化できるスキルやキャリアを持っていれば、転職のハードルが低くなります。雇用が保障されない時代において、転職は身近な存在になってくるので、スキルやキャリアを積んでおくと安心です。
終身雇用の崩壊が進んでいる今、スキルやキャリアは自分の居場所を確保するための大きな武器と言えるでしょう。
対策②今後の成長が見込める企業に転職する
今すぐに終身雇用が崩壊することはないですが、“将来的には崩壊する”と予想されているのが現状です。そのため、終身雇用の企業に転職したからといって、安定した生活が保証されるとは言い切れません。
ですので、転職先を選ぶ際は「企業の成長性」に注目しておくことが重要です。もちろん現在の業績も重要ですが、成長が期待できる企業であれば、業績が右肩上がりになりやすく、長期的な安定を確保しやすいです。
また、市場ニーズが高い分野の企業に転職することで、より専門性の高いスキルや知識を身に付けられます。専門性が高まれば、自分の市場価値も高まるので、雇用が保障されない時代でも居場所を確保しやすいです。
尚、市場の動向や企業の成長性を確認するなら「転職エージェント」を利用するのがおすすめです。転職エージェントには、各業界に精通したコンサルタントが在籍しているので、今後の動向を予想しやすくなります。
多くの転職エージェントでは“無料相談”を受け付けており、選考対策など他のサービスも無料で利用できます。
初めて転職エージェントを利用する方は、手厚いサポートに定評がある「リクルートエージェント」などを検討してみると良いでしょう。
対策③仕事を1つに絞らずに副業もしていく
終身雇用の崩壊は、“1つの会社に居続ける・1つの仕事を続けるのが難しくなる”ことを意味します。そのため、サラリーマンでも「副業」をする人が増えていくことが予想されます。
実際に日本経済新聞のアンケートでは、回答を得た約120社のうち、約50%の企業が「従業員に副業を認めている」と答えていました。
(参考:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO45004150Z10C19A5MM8000/)
副業を今後の対策としておすすめするのは、本業以外で収入源を確保できるからです。雇用が保障されなくなる時代において、副収入を得られる状況は大きな安心材料になるでしょう。
また、副業をすることで、本業では身に付けられないスキルやノウハウを吸収できます。副業をして知見が広がれば、本業に活かして評価を得たり、働く環境の選択肢を増やしたりすることが可能です。
以上の点から、安定した収入や居場所を確保するために、副業は有効な対策と言えます。
まとめ:終身雇用の企業に転職しても安心とは言えない
今回は、終身雇用制度の基礎知識やメリット・デメリット、そして終身雇用の崩壊について解説しました。改めて記事の内容を簡単にまとめてみます。
- 終身雇用制度は慣行であり、法的な義務はない
- 将来的に終身雇用は崩壊する可能性が高い
- 終身雇用が崩壊した時代では「能力・実績」が武器になる
- 転職する際は「企業の成長性」に注目することが重要
- 雇用が保障されない時代では「副業」も有効な対策の1つ
紹介した内容を見る限り、終身雇用制度は“実質的に崩壊している”と考えても大袈裟ではないでしょう。
これから安心・安定を得るためには、スキルやキャリアを積み上げて、自分の市場価値を高めることが重要です。
この記事を読んだあなたなら、変わりつつある時代の中でも自分の居場所を確保できるでしょう。