「部下が自殺しないように対策を考えたい。どうすれば…。」と考えている、部下思いの上司はこの記事を読んでください。
2015年に発生した「電通事件」によって、企業に対する労働のあり方への風向きが強くなっています。そのため、世間からの視線もいっそう厳しくなりました。
もし、部下が自殺してしまったら、企業や上司に損害賠償請求が発生してしまうのです。さらに、部下自身の命を奪うばかりか、職場で働いていた人間たちに心理的なダメージを与えることにもなりかねません。
部下が自殺をした後では、もう遅いのです。そこでこの記事では、上司が部下にできる自殺対策について解説していきます。この記事では、以下の順番で内容を解説していきます。
- 仕事で自殺をしてしまう人の社会的背景について
- 部下が自殺してしまうことによる周囲への影響について
- 上司が部下にできる3つの自殺対策
この記事を読んで、上司であるあなたが、部下の自殺を防ぐための対策を行っていきましょう。ぜひ、最後まで記事を読んでください。
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仕事が原因で自殺する労働者たちは約2万人いる
自殺者の中で、仕事が原因で自殺してしまう労働者たちは、2018年時点で2万840人に登ります。
一方で、2011年までは自殺者数が3万人台まで推移していました。そのため、約1万人ほど自殺者数が減ったことになります。
しかし、自殺者のうち勤務問題を原因・動機とする自殺者の割合は、2007年の6.7%から、2018年には9.7%まで増加し続けているのです。
仕事が原因で自殺してしまう労働者は、後をたたない状況が続いています。
次の項目では、20代の部下が亡くなってしまう主な理由が自殺であるという、衝撃的なデータをお見せします。
20代の部下の主な死亡理由第一位は自殺
あなたの職場に、20代の若い部下もいるかと思います。20代の部下が亡くなってしまう主な原因は、病気ではなく自殺なのです。
厚生労働省が発表した『令和元年版自殺対策白書』によると、20歳~24歳、25~29歳の男女において自殺で亡くなってしまう人の割合は、約50%にも登ります。
20代の部下で亡くなってしまった人のうち、2人に1人は自殺で亡くなってしまう計算になります。決して、他人事ではないことがよく分かるでしょう。
2015年に起こった「電通事件」は社会に衝撃を与えた
ここまで、仕事が原因で自殺してしまう人や、若者が亡くなってしまう主な理由が自殺であることがよく分かったかと思います。近年では、社員の自殺に関する話題で「電通事件」がよく挙がります。
「電通事件」とは、2015年12月25日、大手広告代理店の「電通」に務める当時24歳の女性社員が、長時間労働やハラスメントが原因で自殺した事件のことです。「電通事件」は、社会に大きな衝撃を与えました。
この事件を背景に、企業の長時間労働に対する世間からの視線が厳しくなり、仕事改革が声高に叫ばれるようになりました。
そのため、企業は社員の自殺に関して対策を講じる必要性がますます高まってきたと言えるのです。
「電通事件」は、社会に大きな衝撃を与え、社員の働き方に対する1つの契機になりました。
次の項目では、部下が自殺してしまうと、上司や企業に損害賠償請求が発生してしまう危険性について解説します。
部下が自殺すると、企業や上司に損害賠償請求が発生する
もし、あなたの部下が自殺してしまうと、企業や上司であるあなたに損害賠償請求が発生してしまうのです。
部下が長時間労働や仕事にまつわるストレスでうつ病になり、その後自殺してしまったら、企業や上司はその責任を問われます。
企業には、労働契約にともない、労働者が安全に仕事ができるように配慮する義務があるという、「安全配慮義務」が課せられています。
よって部下の自殺は、企業が「安全配慮義務」を怠ったとされるため、損害賠償請求が発生してしまうのです。
ちなみに、2000年3月24日の「電通過労自殺事件」では、企業が自殺した社員の遺族に対して、1億6,800万円もの賠償金が支払われました。
また、部下が自殺してしまうことによって、労働基準監督署から行政指導を受けることになります。最悪の場合、企業や上司に刑事責任を問われることにもなるのです。
部下の自殺は決して他人事ではなく、企業や上司に責任を問われることが理解できましたか?
次の項目では、部下が自殺をしてしまうことによる職場への影響に関して説明します。部下の自殺は、職場で働く人間たちにも影響を与えてしまうのです。
部下が自殺してしまうと、職場で働く人たちにも悪影響を与える
部下が自殺してしまうことで、同じ職場で働いていた人たちに様々な悪影響を及ぼすことになるのです。職場で働く人たちに与える悪影響に関して例を挙げると、次の通りです。
- 部下と関係の深かった人を中心として、睡眠障害やフラッシュバックが発生する
- 部下を死なせてしまった人の犯人探しが始まり、疑心暗鬼に陥る
- 職場の人間関係が悪化し、仕事の生産性が低下する
- 職場の雰囲気が悪化し、働きがいがなくなる
職場で働く人たちに心理面へのダメージを与えるほか、職場全体の人間関係や雰囲気が悪くなるなど、仕事をするうえで様々な悪影響が発生してしまいます。
部下の自殺は、本人だけでなく周りの人間も巻き込んでしまうのです。
部下の自殺は、同じ職場で働いていた人たちに甚大なダメージを与えてしまうのです。
次の項目では、部下が自殺をしてしまう前兆について紹介していきます。部下が自殺をしてしまうサインを知っているか知らないかで、今後のあり方が大きく変わります。
部下が自殺してしまう前兆とは?
上司や周りの人間が、部下が自殺をしてしまう前兆を知ることで、部下の自殺を食い止めることができます。部下が自殺をしてしまう前兆について例を挙げると、次の通りです。
- 部屋に引きこもることが多くなり、口数が極端に減る
- 優秀な部下が欠勤を繰り返すようになる
- 唐突に思い出話を始める
- 自然のある場所や人が寄り付かない場所に行くようになる
- 手紙や写真、書類の整理をし始める
- 部下が大切にしているものを親しい人にあげる行為をする
- 「お世話になりました。」「もう治らない病気かもしれない。」など、話す言葉が変わる
部下がいつもの様子とは違い、急にしんみりしたり、昔のことを話し始めたりしたら注意です。また、部下が何も話さなくなり、職場へ来なくなることも問題です。
もしかしたら、自殺の前兆である可能性があります。上司や周りの人間は、部下の前兆にいち早く気付くことで、部下の命を助けることに繋がります。
部下が自殺をしてしまう前兆を理解できたところで、次の項目では、部下への3つの自殺対策を紹介します。
部下にとるべき3つの自殺対策とは?
部下が自殺をしてしまうことは、どこの会社でも起こりうることです。上司は、部下自身の命や職場環境を守るために、部下にとるべき3つの自殺対策を行いましょう。
上司が部下にとるべき3つの自殺対策についてそれぞれ紹介すると、次の通りです。
- 部下との信頼関係作りなど、日頃からできることを行う
- 部下の異変に気付いたらすぐに声をかける
- 部下が自殺してしまった時のために、職場のサポート体制を作る
部下の自殺を未然に防ぐための対策、部下が自殺をする可能性がある時にできる対策、部下が自殺をしてしまった後にできる対策の、3つのケースに分けて対策を紹介していきます。
次の項目から、部下の自殺を未然に防ぐために、日頃からやっておきたい対策について紹介します。
上司ができる部下への自殺対策①日頃からできることをやる
上司は部下の自殺を防ぐために、日頃からできることをやっておきましょう。上司が部下に日頃からできることは、例を挙げると次の通りです。
- 部下との会話を心がけ、話しやすい雰囲気を作っておく
- 部下との会話を重ねることで、特徴を把握する
- 部下の仕事量、労働時間や残業時間などを把握する
- 部下に特定的な過剰労働が集中していないか把握する
上司は部下と会話を重ねることで、お互いの信頼関係を作り上げることができます。さらに、上司が部下の特徴を把握することで、部下の異変に気付きやすくなります。
また、上司が部下の仕事量などを管理することも大切です。部下の過重労働によるうつ病を防ぎ、部下の自殺を未然に防ぐことができます。
上司が日頃からできることこそ、部下の自殺防止を行ううえで重要な対策なのです。
上司ができる部下への自殺対策②すぐに声をかける
なんか、部下の様子がいつもと変だな…。
上司が部下の姿を見て、いつもと違う何かをキャッチしたら、すぐにでも声をかけましょう。その直感が、部下を自殺から救えることもあるのです。
もしあなたが声をかけずに、その後部下が自殺してしまったら「なんであの時、声をかけなかったんだ…。」と、一生後悔することになります。
上司が部下に声をかけた場合に予想される会話は、次のケースが考えられるでしょう。
もう、死にたいです…。
死にたいだなんて、そんなこと言うもんじゃない!
上司が部下の「死にたい。」という言葉を否定することで、部下はますます心を閉ざしてしまいます。
上司は部下の言葉を否定するのではなく、「そうか。死にたいぐらい辛いんだな。」と、部下の気持ちを受け入れるようにしましょう。
上司は部下の気持ちを受け入れることで、部下の気持ちを和らげることに繋げられます。
部下が上司に自殺するほど辛い気持ちを伝えたとしても、上司1人だけで問題を抱えるのは得策ではありません。
上司1人だけが部下の問題を抱えることで、上司も潰れてしまう可能性があるからです。そんな時には、無理せず専門家の力を借りましょう。
上司ができる部下への自殺対策③職場のサポート体制を作る
もし、部下が自殺してしまったら、職場の人へのダメージは計り知れないものです。そのため、部下が自殺してしまった後、職場にいる人へのサポート体制を作ることも重要です。
例を挙げると、上司は職場の人間に声をかけて体調を確認したり、具合が悪ければ休ませたり、仕事の負担を軽減させるように業務量を見直したりする方法が挙げられます。
職場にいる人間が、部下の自殺によって受けたストレスは、通常、2~4週間ぐらいかけて消失します。1ヶ月経てば、多くの人が症状の改善や消失を実感できるようになるのです。
ただし、1ヶ月経っても職場にいる人間が睡眠障害やフラッシュバックに悩まされるなら、上司はその社員に心療内科や精神科への受診を勧めましょう。
まとめ
ここまで、上司が部下にできる自殺対策について解説していきました。
日本では、仕事が原因で自殺してしまう人は後を絶たず、20代の若者で亡くなってしまう主な原因は自殺です。
2015年に発生した「電通事件」によって、企業は労働のあり方を突き詰められるようになりました。部下が自殺してしまうと、企業や上司への損害賠償請求が発生してしまうため、自殺対策を講じることは重要です。
この記事で紹介した上司が部下にとるべき3つの自殺対策は、次の通りです。
- 部下との会話を重ねるなど日頃からできることをやる
- 部下の異変に気付いたらすぐに声をかける
- 部下が自殺した時のために職場の人たちへのサポート体制を整える
部下の自殺は突然やってくるものです。上司は部下の自殺を食い止められるように、日頃からの対策を積み重ねていくことが、何よりの近道です。
部下の自殺は、本人だけでなく周りの人間にも大きなダメージを与えるものです。
上司であるあなたがこの記事で紹介した内容を理解すれば、部下の命や周りの人間を救えます。ぜひ、後悔のないように対策を実行してください。
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