部下から突然「転職したい」と切り出され、対処方法がわからずお悩みではありませんか?部下からの相談はショックかもしれません。しかし、考え方によっては管理職マネジメント力を向上させる良い機会になります。
相談されたことをポジティブに捉えるには、なぜ部下は転職を決めたのか、その理由をよく聞き、部下の気持ちを尊重した対応をとることがポイントです。
この記事では、部下が転職を切り出した時の上司の対応について、管理職マネジメントの視点から解説します。
今後他の部下が転職することを防ぎ、うまくマネジメントするためのヒントにしてください。
部下からの転職相談!結論を急がずワンクッション置こう
部下から転職を相談されたら、結論を急がずワンクッション置きましょう。なぜなら、結論を急ぐ場合は、必ずと言って良いほど、自分や会社本位のリアクションをしてしまうからです。
頭ごなしに叱ったり、「辞められては困る」と言ったりすると、部下は「自分たちの都合しか考えていない」と解釈し、ますます転職意思を強めてしまいます。
それよりも、相談してくれたことに感謝の気持ちを示し、「君にとっても私にとっても大事なことなので、真剣に考えたい」と、あなたの意向を伝えましょう。
ワンクッション置くことで時間的に余裕ができ、これからどう話し合いを進めていくか、冷静に考えられるようになります。
部下に転職したい理由を聞き決意の度合いを把握する
部下の転職を希望する気持ちを受け入れたら、次は職を変えたい理由を聞きましょう。
なぜなら、転職したい理由には個人差があり、退職を決断するに至った背景や、決意の度合いも異なるからです。部下の本音を知り、それに合わせて対応するのが、上司の役目になります。
具体的には、「なぜ転職したいの?」とストレートに質問し、部下の話によく耳を傾けましょう。どんな理由に対しても否定せず、一旦受け止めて共感することが大切です。
部下の本音を知ると、転職が部下にとって良い選択かどうか見極められます。また、あなたのマネジメント力についても見直す機会になるでしょう。次の章から、よくある部下の転職理由とその対処法について解説します。
部下が転職したい3つの理由
この章では、部下が転職したい3つの理由について解説していきます。2019年エン・ジャパンによる「退職のきっかけ」に関するアンケート結果によれば、部下が転職したい理由は、以下の通りです。
- 給与ややりがいに不満があり、スキルアップしたい
- 結婚や親の介護などプライベートで辞める事情ができた
- 会社の体制や社員同士の人間関係など会社に不満がある
部下がスキルアップのために転職したいと言っているのであれば、「このまま職場にいても成長は見込めないな」と部下は思っています。
プライベートな理由で部下が転職をしたいと言っているのであれば、部下がスムーズに転職できるように、上司はサポートしてあげましょう。
会社に不満があって、「転職したい」と部下が言っているのであれば、どんな不満があるか聞き出すことが大切です。
次の章から、部下が転職する3つの理由について、それぞれ解説していきます。
部下が転職したい理由①「スキルアップしたい」
部下が転職したい理由1つ目は、スキルアップしたいという理由です。スキルアップを理由に離職する場合、新しいことに挑戦したい、以前から憧れていた業界で活躍したいなど、ポジティブな場合がほとんどです。
その一方で、仕事を続けていても意味がないなど、成長が望めずに転職を考える場合もあります。後者は、マネジメントの仕方が原因であることが考えられます。
たとえば、どんなに頑張っても上司から評価されることがなければ、部下は「この会社で頑張っても仕方がない」と、やる気を失くしていくでしょう。そして、自分の能力を伸ばせる場を他に見出そうと考え始めます。
スキルアップを理由に会社を辞めたいと部下に言われたら、ポジティブな本音かネガティブかを見極めましょう。スキルアップを理由に転職を決断している部下への対応については、次の章で解説します。
スキルアップしたいと言われた時の対処法
部下がスキルアップのために転職したい場合の対処法は、以下の2つです。
- 他社にスキルアップの可能性を見出している場合は、素直に送り出す
- 迷いが見られたら、職を変えずにスキルアップできる方法を提案する
転職に迷いはないという場合は、円滑に会社を退職できるようサポートしましょう。
部下がスキルアップしたいものの具体的な転職先を決めてない場合、条件によっては転職を思いとどまらせるチャンスが出てきます。
たとえば「社内の研修制度を利用したらどうだろう」など、転職しなくてもスキルアップできる方法を提案してあげます。
このように、部下の意向に沿って対応することで、部下は上司に対して「この人なら自分の成長を見届けてくれる」と感じ、もう一度上司の下で働こうと思い直すかもしれません。
部下が転職したい理由②「プライベートな理由」
部下が転職したい理由2つ目は、プライベートな理由です。プライベートが理由の場合は、本人の意思に関係なく、転職せざるを得ない場合がほとんどです。
なぜなら、プライベートな理由には、親の介護や結婚、育児など、どうしても転職しなければならない事情が背景にあるからです。
たとえば「父親の介護のため実家に帰り、地元で働くことになった」というのが転職の理由なら、上司としては転職がうまくいくよう後押しすることが、最善の方法ではないでしょうか。
プライベートを理由に転職したいと相談された場合は、自分の意志ではどうにもならない部下の事情に共感を示し、今後の方針を決めていくことになります。
プライベートな理由と言われた時の対処法
プライベートな理由で会社を辞める部下に対しては、退職するまでサポートに徹することが大切です。それと同時に、業務が滞らないよう職場環境に気を配ります。
辞める予定のある人がいつまでも職場で働いていると、仕事がやりにくい雰囲気が広がり、「部下たちが働きやすい職場環境をつくる」という、管理職マネジメントの目標達成が難しくなくなります。
部下には「転職先が決まってから、仕事の引き継ぎや退職の手続きを始めたほうがいいよ」と、アドバイスし、そこから最短で引き継ぎできるようスケジュールを組みましょう。
部下が退職の手続きをスムーズに進められるよう配慮してあげれば、部下はあなたに感謝し、気持ちよく会社を離れられます。仕事の引き継ぎもスムーズに済ませれば、職場環境も健全に保てるでしょう。
部下が転職したい理由③「会社に不満がある」
部下が転職したい理由3つ目は、会社に不満があることです。会社への不満が原因で転職を考えている部下は多いのです。
たとえば、残業が多く家と仕事の往復で毎日が終わる、人間関係に疲れた、業務負担が多く手一杯になっていてしんどいなど、職場には様々な問題が生じます。
このような会社への小さな不満が蓄積されていくと、次第に部下は転職を考えるようになるでしょう。実は会社への不満は、上司のマネジメント不足によるものである場合が多いです。
次の章では、会社に不満があると言われた場合の対処法について解説します。
会社に不満があると言われた時の対処法
会社が不満で転職を決めたと部下に告白されたら、部下の意向に沿った解決策を提案しましょう。
なぜなら、会社に対する不満が解消されれば、部下は転職を思いとどまる可能性が高くなるからです。たとえば「人間関係に疲れた」ということが問題としましょう。
解決策として、「部署の配置転換を行い、月に1度人間関係の悩み相談を行う」と提案します。実際にその通りになったとたら、部下の不満は解消されるのではないでしょうか。
その結果、部下はあなたを信じてもう一度頑張ろうという気持ちになるかもしれません。このように、マネジメント能力を発揮することで、部下を転職させずに丸く収めることも可能です。
部下の転職に上司が気付かない理由
この章では、部下の転職に上司が気づかない理由について解説します。部下の転職に上司が気づかない理由は、自らの業務と部下の指示出しで業務負担が大きくなり、部下の精神的な面でのサポートが手薄になるからです。
リクルートマネジメントソリューションズが実施した調査によると、上司が評価している部下のうち31%は、仕事に対しネガティブな感情を持っているということがわかりました。
このように、マネジメントが十分に行き届いていないと、上司と部下との間で、考え方にすれ違いが生じます。そして、互いの溝が深まると、部下は転職する方向に気持ちが傾くようになります。
考えにすれ違いが起きないように、部下の意見を聞いておくことが大切です。「仕事が楽しくない」と部下が思うと転職する確率が高まります。普段から、部下とコミュニケーションを取って不満はないか聞きましょう。
まとめ
部下の転職理由3つと部下から転職を切り出された時の対応方法についてご紹介しました。最後にまとめて紹介します。
- スキルアップしたい 対処法:転職しなくてもできるスキルアップを提案する
- プライベートで辞める事情ができた 対処法:素早く退職できるようにサポートする
- 会社に不満がある 対処法:不満を聞き出し、不満を解決する
相談されたことをポジティブに捉えると、マネジメント力を向上させる良い機会になります。
部下の気持ちや本音を尊重して行動すると、場合によっては転職を思いとどまらせる結果に繋がります。また、転職の相談に真剣に取り組むことで、部下に対するマネジメントの改善点も発見できるでしょう。
転職の相談に対して適切に対応するには、部下の話をよく聞き、本音を引き出すことがポイントです。
マネジメント力の高さは、あなたをはじめ、部下にとっても会社にとってもメリットになります。今回の経験を踏まえ、今後の管理職マネジメントに役立てましょう。