ライバル会社から見つけた優秀な人材を引き抜くヘッドハンティング。自社にとって必要な人材を獲得するためにヘッドハンティングの契約金を支払うのも必要な事です。
また、必要とされているとはいえ別の企業へ行くのは先が見えないリスクがあります。なので、ヘッドハンティングの契約金を要求するのも当然のことでしょう。
しかし、世の中世知辛いものです。ヘッドハンティングの契約金に発生する税金問題。この記事では、ヘッドハンティングの契約金に関する税金問題を解決することができます。
ヘッドハンティングの契約金を受け取る側の税金だけでなく、支払う側の税金についても触れているので、ヘッドハンティングに関わる人は参考にしてみて下さい。
本記事での契約金とは、支度金の意味も含まれています
ヘッドハンティングの契約金は課税されるのか?
始めに、ヘッドハンティングの契約金を受け取る側の税金について解説していきます。ヘッドハンティングの契約金は課税対象です。契約書を交わさない契約金であっても、所得として扱われるので課税されます。
ただし、ヘッドハンティングの契約金は、雇用契約の前と後、どちらのタイミングで受け取るかによって所得の性質が変わってくるので注意が必要です。
「雇用契約前」と「雇用契約後」どちらのタイミングで契約金を受け取ったら、所得がどのように変わってくるのかを次の項目で解説したいと思います。
『雇用契約前』に得たヘッドハンティングの契約金の場合
雇用契約前に得たヘッドハンティングの契約金は「雑所得」となります。雑所得は特別な控除はないのですが、実際にかかった経費を計上することができます。
ですが、ヘッドハンティングの契約金を受け取る際に必要となる経費はあるのでしょうか?おそらくない場合がほとんどでしょう。なので、実質経費を計上することはありません。
給与所得と比べると給与所得控除も受けられないので、契約金の全額が課税対象となる雑所得となると課税される金額が多くなりがちです。
しかし、就職に伴う転居に必要な費用は、明確に区分されていれば非課税となるので、新しい会社に就職する際に転居が必要な場合は、契約金の一部を転居費用としてほしいと打診するのも一つの手だといえます。
雑所得の場合は確定申告が必要
前の項目で、雇用契約前に得たヘッドハンティングの契約金は「雑所得」となると説明しましたが、その場合は受け取る金額により確定申告が必要です。
具体的には、2000万円以下の給与所得者で雑所得が20万円以上の場合は確定申告をする必要があります。
新しい就職先の会社は、ヘッドハンティングの契約金を支払う際に源泉徴収を行っているはずなので、税務署は受け取る側が契約金を受け取ったことを承知しています。
確定申告を忘れた、または申告漏れで追徴課税された・・。なんてことがないように忘れずに確定申告は行いましょう。
『雇用契約後』に得たヘッドハンティングの契約金の場合
雇用契約を締結した後に受け取ったヘッドハンティングの契約金は「給与所得」となります。雑所得と違い、給与所得控除を受けられるので、税金面では有利です。
また、給与所得となると確定申告を行う必要はないので手間も省けます。確定申告は所得税だけでなく、市役所で住民税の手続きもしなければいけないのでとても手間です。省けるのはとても助かりますね!
どうしても雇用契約前に契約金を受け取りたいなど特別な理由がない限り、契約後にヘッドハンティングの契約金を受け取った方が、節税になるといえます。
ヘッドハンティングの契約金は一時所得となることはない
収入の2分の1に課税される一時所得。雑所得・給与所得と比べて税金面で優遇されていますが、ヘッドハンティングの契約金は一時所得となることはありません。
一時所得とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得をいいます。
引用元:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1490.htm
ヘッドハンティングの契約金は実際に働いた対価として受け取ったものでは無いですが、雇用契約を結ぶという前提で受け取っているので「労務または役務の対価としての性質を有する」ことになります。
したがって、ヘッドハンティングの契約金は一時所得となることはないのです。ここまでが、ヘッドハンティングの契約金を受け取る側の税金の解説となります。
次の項目からは、支払う側の場合のヘッドハンティングの契約金についてふれていきます。どのような処理となるのか参考にしてみて下さい。
ヘッドハンティングの契約金は損金となる
ライバル社から優秀な人材を見つけたので自社に引き入れたい。ヘッドハンティングをする際には、専門のエージェントに依頼をすることになるでしょう。
となると、受け取る側にヘッドハンティングの契約金を支払うだけでなく、エージェントにも依頼料を支払う必要がでてきます。
ヘッドハンティングの契約金、エージェントへの依頼料、共に支出時の損金として、支出した事業年度の決算時に計上しなければいけません。
よくある勘違いとして、「繰延資産」として計上してしまいがちですが、なぜ繰延資産ではなく損金として計上するのか次の項目で解説していきます。
なぜ繰延資産ではなく損金となるのか
支出の効果が長期にわたって持続するものであれば繰延資産として計上することは可能ですが、人材の引き抜きは支出の効果が長期にわたって持続する保証はないため、繰延資産として計上することはできないのです。
相手が納得して自社に来たのだからきっと長くいてくれるだろう。だから、支出の効果が持続するのでは?と感じるかもしれません。
例えば、受け取る側が「思っていたのとは違った」と感じて退職してしまう可能性もあります。また、事故や病気などの理由により勤務することが不可能となってしまう可能性もあります。
機械設備と違い明確な持続の保証が困難なため、ヘッドハンティングに対しての費用は繰延べることができないのです。
ヘッドハンティングの契約金は源泉徴収が必要になる
ヘッドハンティングの契約金は報酬料金としてみなされます。なので、支払う金額に所得税の源泉徴収を行う必要があります。具体的な税額は以下の通りです。
所得税(10%)+復興特別所得税(0.21%)=10.21%
所得税(20%)+復興特別所得税(0.42%)=20.42%
平成49年12月31日まで、復興特別税として所得税額の2.1%が課税されます。
中には、ヘッドハンティングの契約金を受け取る側から源泉徴収をしないでくれ。と頼まれるケースもあるでしょう。ですが、源泉徴収は義務となっているので必ず行う必要があります。
仮に、受け取る側の要望をのんで源泉徴収をしなかったとします。その場合、税務署からの指摘があった場合は会社の責任となってしまうので、要望があった際には源泉徴収は義務だということを説明しましょう。
ヘッドハンティングの契約金が非課税となる場合
受け取る側の転居に伴うための費用は、「転居のための費用」と明確に区分されていれば非課税となります。ですので、転居のための費用として区分されたものに関しては、源泉徴収を行う必要がありません。
とはいえ、区分が適正であるとの証明をするための書類が必要になる可能性があるため、契約金を全額「転居のための費用」とすることは不可能です。
受け取る側が就職の際に転居が必要となる場合は、契約金の一部を非課税になるから「転居のための費用」としてはどうか?と打診してみるのもいいかもしれません。
ちょっとした気遣いでも、受け取る側は「この会社は本気で自分の事を考えてくれている」と感じてくれるでしょう。
まとめ
ヘッドハンティングの契約金を受け取る側からしたら、全額自分のために使える!と喜びたいですが、税金の対象となるため実際にもらえる金額は提示された金額よりも少なくなってしまいます。
実際、税金の事を考えずに契約金を全額使ってしまい、税金を支払えなくなったというトラブルもあるそうです。
ヘッドハンティングの契約金を支払う側も、契約金の会計処理を間違えたために追徴課税された、というトラブルもあります。
お互いが良好な関係を築くために行ったヘッドハンティング。正しい知識をもってトラブルなく業務に励みたいものです。ヘッドハンティングの先に成功があることを祈っています。