部下と突然連絡が取れない状況になって、困ってはいませんか?いきなり連絡が取れなくなると、部下が何らかのトラブルに巻き込まれていないか、心配になりますよね。
本記事では、「部下と連絡が取れないときの3つの対処法」について、解説しています。この記事を読むと、部下と突然連絡が取れなくなった時の対処法がわかり、冷静に対応することができますよ。
また、記事の後半では、「部下と連絡が取れない4つの原因」と「部下と連絡が取れない事態をそもそも防ぐための対策」を紹介しています。ぜひ最後まで読んでくださいね。
安全配慮義務が法律で定められているため部下の安否確認は必須
まずは、会社側は連絡が取れない部下に対して、安全配慮義務(あんぜんはいりょぎむ)を負っていることを理解しておきましょう。
安全配慮義務とは、会社側が社員に対して、安全に働く環境を提供する義務のことです。これは、労働契約法第5条によって、定められているものです。
労働契約法第5条「使用者は労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」(引用元:https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=419AC0000000128&openerCode=1#20)
法的責任を回避するためにも、部下と連絡が取れていないときに、そのまま放置するのは止めましょう。
仮にその部下が亡くなっていた場合、会社は上記の安全配慮義務違反を理由に、責任を負わされる可能性があります。
そのため、これから紹介する対処法を実践して、部下の安否確認をしましょう。部下と連絡が取れないときの対処法は、以下の3つです。
- 自宅を訪問する
- 身元保証人に連絡する
- 警察に捜索願を出す
それでは、部下と連絡が取れないときの対処法を、ひとつひとつ丁寧に解説していきます。
部下と連絡が取れないときの対処法①自宅へ訪問する
最初に紹介する方法は、「自宅へ訪問する」です。部下が自宅の部屋の中で倒れているケースなどがあるため、自宅を訪問してみましょう。
自宅のチャイムを何度か鳴らせば、部下が外に出てくるかもしれません。もし、自宅に不在のときには、ポストに訪問したことが伝わるメモを残しましょう。
メモを残しておけば、後から折り返しの連絡がくる可能性がありますし、会社側は安全配慮義務を果たしたことになります。
「2日間くらい」無断欠勤が続くようであれば、部下の自宅を訪問してみましょう。
部下と連絡が取れないときの対処法②身元保証人に連絡する
2つ目に紹介する対処法は、「身元保証人に連絡する」です。部下の自宅に訪問しても、安否確認が取れない場合は、部下の身元保証人(家族・同居人など)に連絡してください。
身元保証人の連絡先は、部下から入社時に提出してもらった緊急連絡先の書類に記載されているでしょう。身元保証人と連絡を取ることができれば、音信不通になった理由がわかるかもしれません。
「身元保証人と連絡が取れたけど、部下の行方がわからない場合」、「身元保証人と連絡が取れない場合」は、警察に捜索願を出すしかないでしょう。
部下と連絡が取れないときの対処法③警察に捜索願を出す
最後に紹介する対処法は、「警察に捜索願を出す」です。部下と連絡が取れない状況が続き、行方がどうしてもわからない場合は、警察に頼るしかありません。
部下が自宅で死亡していたり、事件に巻き込まれていたりする可能性もあるので、捜索願を出しましょう。
警察署に行き、「捜索願を出したいです」と警察官に言うと、捜索願の記入用紙を出してくれます。
捜索願を警察署に出しに行く際には、あなたの身分証(免許書、保険証など)と印鑑を持参してください。その他にも、部下の顔や体型がわかる写真を数枚持参することが望ましいでしょう。
連絡が取れない部下を解雇するのは簡単ではない
ここまで、部下と連絡が取れないときの対処法を紹介してきましたが、音信不通で無断欠勤が続くようならば、「解雇」や「自己都合退職」を検討するしかないでしょう。
しかし、連絡が取れない部下を解雇するのは、簡単ではありません。
例えば、解雇した後に、本人から連絡があり、正常に出勤できるようになった場合、部下から「不当解雇」で訴訟を起こされる可能性もあります。
リスクを避けるためにも、これから紹介する方法で、きちんとした手続きをして、退職してもらいましょう。音信不通の部下を退職させる方法は、以下の2つです。
- 就業規則に基づき退職させる
- 書面を用いて解雇する
これから、連絡が取れない部下を退職させる2つの方法を、それぞれ丁寧に解説していきます。
連絡が取れない部下を退職させる方法①就業規則により退職させる
最初に紹介する連絡が取れない部下を退職させる方法は、「就業規則により退職させる」です。まずは、会社の就業規則を確認してみましょう。
通常、就業規則には「退職・解雇の条件について」の記載があるので、就業規則に基づいて部下を退職させましょう。
しかし、就業規則の条件を満たしているからといって、すぐに退職扱いにすると、のちに部下と連絡が取れたときに、不当解雇で訴訟されるリスクがあります。
そのため、部下と連絡が取れるように、安否確認などをしっかりと行い、手を尽くした後に退職扱いとしましょう。
連絡が取れない部下を退職させる方法②書面を用いて解雇する
2つ目に紹介する連絡が取れない部下を退職させる方法は、「書面を用いて解雇する」です。
「当社の就業規則○条○項に基づき、〇年〇月〇日までに連絡をいただけなかった場合、懲戒解雇いたします。」
上記のように、郵便で解雇の理由が書かれた通知書を連絡が取れない部下に対して送ると、就業規則に基づいて解雇することができます。
しかし、部下と連絡が取れたときに、「そんな手紙届いた覚えがない」と言われて、トラブルになる可能性があります。そのため、書面で解雇するには、「内容証明郵便」「公示送達」を使う必要があります。
内容証明郵便
音信不通の部下が家族と同居している場合は、内容証明郵便を同居の家族が受け取った時点で、部下本人が郵便を受け取り、読んだのと同じ効力を持ちます。
また、配達証明をつけることによって、相手が郵便を受け取ったことの証拠も手元に残ります。
しかし、部下と同居の家族に内容証明郵便を届けることができない場合は、効力が生じないため、「公示送達」を行う必要があります。
公示速達
公示送達(こうじそうたつ)とは、相手方がどこにいるか知ることができない場合や、相手方の住所がわからない場合に、法的に文章が送達したものとする手続きのことです。
部下が住んでいる自宅の住所を管轄する簡易裁判所でこの制度を利用すると、部下本人へ実際に解雇の意思表示が届いたかどうかは関係なく、会社の意思表示がなされたと認められます。
公示送達を行うと、「部下は解雇通知書を受け取ったが、それでも返答をしていない」という状態になるので、懲戒解雇手続きを行っても適切な対応であると、トラブルになっても主張できるでしょう。
公示速達は、内容証明郵便よりも手続きが複雑なので、まずは内容証明郵便を発送し、内容証明郵便が届かない場合は、公示送達の手続きをすると良いでしょう。
部下と連絡が取れない4つの原因
そもそも、部下と連絡が取れないのは、なぜなのか気になりますよね。
これから、部下と連絡が取れない主な原因について解説していきます。部下と連絡が取れない主な原因は、以下の4つです。
- 退職を告げる勇気がないから
- 逮捕されているから
- 体調を崩しているから
- 自宅で死亡しているから
それでは、部下と連絡が取れない4つの原因を、一つずつ詳しく解説していきます。
①退職を告げる勇気がないから
最初に紹介する原因は、「退職を告げる勇気がないから」です。「退職することを、上司へ伝えるのが気まずい」との思いから、連絡を取らないようにしているのです。
この原因で連絡が取れない部下は、退職を上司へ伝えることを、後ろめたい気持ちがあります。そのため、連絡が取れないまま退職に繋がる可能性が高いでしょう。
部下に退職の前兆があった場合には、自宅に訪ねて安否確認をすると、直接話し合いに持ち込むことができる可能性があります。
②逮捕されているから
2つ目に紹介する原因は、「逮捕されているから」です。部下が警察に逮捕されてしまった場合は、連絡を取るのが困難になります。
社員が逮捕されたという事実を知る方法には、例えば以下のものがあります。
- 会社に弁護士から連絡がくる
- 身元引受人に上司が指定され、警察署から連絡が来る
- 部下の家族から連絡がくる
部下が逮捕された疑いがある場合には、部下の家族に連絡を取って確認するか、または警察に捜索願を出すと良いでしょう。
③体調を崩しているから
3つ目に紹介する原因は、「体調を崩しているから」です。うつ病などの精神疾患で連絡を取るのが難しくなっている、もしくは事故や病気で入院してしまい、連絡を取れなくなっているというパターンです。
部下が体調を崩しているかどうかは、部下の家族に連絡を取ると、わかる場合があるでしょう。
④自宅で死亡しているから
4つ目に紹介する原因は、「自宅で死亡しているから」です。急死や、自殺などの可能性が考えられます。
自殺の場合は前兆があるかもしれませんが、急死の場合は前兆がなく音信不通になるので、対策のしようがないでしょう。
死亡の疑いがあるときには、家族に連絡したり、警察に捜索願を出してみたりすると良いしょう。
部下と連絡が取れない!という事態をそもそも防ぐための対策
ここまで、部下と連絡がとれない原因や対処法を紹介してきましたが、そもそも部下と音信不通になることを避けたいですよね。
部下と音信不通にならないためには、日頃から部下とコミュニケーションを積極的にとり、常に部下の様子を細かくチェックしておくと良いでしょう。
部下とコミュニケーションを積極的にとると、連絡を取りやすくなったり、部下の小さな変化に気づいたりすることができます。
また、部下と連絡が取れなくなった時の対応のルールを、事前に決めておくことも重要です。
- 実家など緊急連絡先を事前に把握しておくルール
- 〇日以上連絡が取れないときは自宅へ訪問するルール
- 〇日以上連絡が取れないときは退職扱いにするルール
上記の例のように、万が一の事態が発生した際にも、対処できる準備を事前にしておきましょう。
まとめ
部下と連絡が取れない状況を冷静に対処するために、最後にもう一度、「部下と連絡が取れない時の3つの対処法」をおさらいしましょう。
- 自宅を訪問する
- 身元保証人に連絡する
- 警察に捜索願を出す
会社側には、部下に対して安全に働く環境を提供する義務があるので、音信不通になってしまった理由がどうであれ、部下と連絡を取るために、できる限りのことをしましょう。
そして、どうしても連絡がつかなかった場合には、就業規則に基づいて退職の手続きを行ったり、内容証明郵便や公示送達を用いて懲戒解雇の手続きを行ったりしてください。
また、部下とそもそも音信不通にならないために、事前に対策しておくと良いでしょう。最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。