管理職として働く従業員の中には「いずれは役員になりたい」と考えている方もいるでしょう。
しかし、役員がどのような立場の存在なのか、管理職と役員の違いは何なのか、正確に理解している方は少ないのではないでしょうか。
そこで今回は、管理職と役員の違いについて解説していきます。また、昇格する際の注意点も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
(トップ画像出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/4193135?)
管理職の定義
役員との違いを理解するために、まずは管理職の定義をおさらいしておきましょう。
管理職とは、組織の目標達成のために「部下の指揮・管理」「プロジェクトや組織の運営・管理」といった業務を担う立場にある人を指します。
一般的には「課長」以上の決裁権を持っている職位が、管理職に該当するケースが多いです。
但し、会社によって決裁権の範囲や基準が異なるため、どの職位から管理職に当てはまるのかは確認しておく必要があります。
役員の定義
管理職の定義に続いて、役員の定義についても確認していきましょう。
役員とは、企業方針など重要事項の決定に関わる立場にある人で、日本における会社法では「取締役」「会計参与」「監査役」のことを指します。(参照:会社法第329条)
なお、会社法施行規則では、上記の役員に加えて「執行役」「理事」「監事」なども含まれています。
一般的には「執行役員」も役員と解釈されることが多いですが、会社法上では“役員ではない”ことを留意しておきましょう。
管理職と役員の具体的な違いとは?
この章からは、管理職と役員の違いについて解説していきます。大きな違いとしては、以下の3つのポイントが挙げられます。
- 雇用形態
- 給与・報酬
- 責任範囲
業務内容だけでなく、管理職と役員には「雇用形態」「給与」「責任範囲」に決定的な違いがあります。
まずは管理職と役員の違いを認識し、両者のポジションが“全くの別物”ということを理解しておきましょう。
次の章からは、上記の3つの違いについて詳しく解説していきます。
管理職と役員の違い①雇用形態
管理職と役員の大きな違いとして、まず挙げられるのが雇用形態です。
ご存知の通り、従業員である管理職は、企業と「雇用契約」を結びます。労働者として扱われるので、雇用保険の対象となり、労働時間が制限されます。
一方、従業員ではない役員は、企業と「委任契約」を結びます。なお、使用者(経営者)である役員には、雇用保険も労働時間の規制も適用されません。
役員になれば、より大きな裁量を持って仕事ができますが、管理職のように“守ってくれる規則がない”ことを念頭に置いておきましょう。
管理職と役員の違い②給与・報酬
管理職が「従業員給与」を受け取るのに対し、役員は「役員報酬」を受け取ります。具体的な違いとしては、以下の3つの点が挙げられます。
項目 | 従業員給与 | 役員報酬 |
支払いの位置付け | 労働の対価 | 職務執行の対価 |
支払い条件 | 業務時間や業績などによる | 特になし(役員自身が自由に決定できる) |
税法上の取り扱い | 原則として全額損金に算入できる | 一定の条件を満たした場合、相当額を損金に算入できる |
従業員である管理職は、労働時間や業績などに応じて給与が支払われます。最低賃金や減額制限などのルールが適用されるので、安定して給与を受け取ることができます。
一方で役員は、自身で報酬額を決めることが可能です。但し、不正や利益調整を防ぐため、役員報酬については法律で細かく規定されています。
また、従業員にあるようなルール(最低賃金など)は適用されないので、急に収入が減るリスクがあることも頭に入れておきましょう。
給与・報酬面を見るだけでも、管理職と役員が“全くの別物”ということを理解できるのではないでしょうか。
管理職と役員の違い③責任範囲
管理職と役員を比較したとき、責任範囲も大きな違いとして挙げられます。
前述したように、管理職は会社にとって従業員になります。従業員の場合、業務上横領など責任を取るべき理由がなければ、個人的な責任を追求されることはありません。
しかし、経営者である役員は、会社の経営に対する責任を負う立場にあります。ですので、自身が違法行為に加担していなくても、従業員が起こした不祥事に対する責任を追求されます。
また、会社の業績が悪化した場合、役員は株主や債権者に対しても責任を負わなければなりません。役員への昇格は、大きな裁量や報酬を見込めますが、相応の責任を伴うことも理解しておきたいところです。
役員に向いている人の特徴
ここまでの内容から、管理職と役員の違いについて認識できたかと思います。
両者は全くの別物であるので「管理職として優秀だから役員に向いている」とは言い切れません。
では一体、どのような人に役員は向いているのでしょうか。役員に相応しい人が持つ、主な特徴を4つほど挙げてみます。
- 経営者としての力強いビジョンを持っている
- 社会全体を見据える広い視野を持っている
- 自分のことよりも仲間の成長・成果を喜べる
- 人を惹きつける魅力があり、力を貸してくれる人がいる
特に役員において重要なのが「ビジョン」と「視野」です。前述したように、役員は経営責任を負う立場にあるので、経営者としての視点が必要になります。
ビジョンとは“企業の在り方”を示すもので「経営理念」「数値目標」「教育方針」などが挙げられます。
人は“本気で実現しようとする姿勢”に惹きつけられるので、明確なビジョンを示せば、より意欲の高い人材が集まってくるでしょう。
また、成長し続ける企業ほど「新しい価値を提供したい」「持続可能な社会を実現したい」と考えているものです。ですので、自身や自社のことだけでなく、社会全体を見据える広い視野も重要と言えます。
役員に向いていない人の特徴
前章では、役員に向いている人の特徴を紹介しました。では反対に、どのような人は役員に向いていないと言えるのでしょうか。
以下のような傾向にある人は、役員への昇格が時期尚早と言えるでしょう。
- 現在の業務が忙しくて、他のことに目を向けられない
- 情報収集が遅い・勉強不足の傾向にある
- 失敗に対する恐れや過去の栄光に捉われがち
経営者である役員は、会社・業界・社会全体を見据える広い視野が必要です。どのような状況にあっても、顧客ニーズや時流の流れを捉え、先手を打っていくことが求められます。
ですので、「今の業務をこなすことで手一杯」と視野が狭まっている方は、役員としての責務を果たすのは難しいかもしれません。
また、情報収集不足は“現状認識の遅れ”、失敗に対する恐れは“変革力の弱さ”に繋がります。
役員は、現状を捉える能力や変化を恐れない決断力が求められるので、上記の特徴に当てはまる方も時期尚早と言えるでしょう。
管理職から役員に昇格する際の注意点
最後に、管理職から役員に昇格する際の注意点を解説します。特に注意しておきたいポイントとしては、以下の2点が挙げられます。
- 管理職と役員の「契約形態」の違い
- 管理職と役員の「責任範囲」の違い
管理職と役員の「契約形態」の違い
前述したように、役員は企業と雇用契約ではなく「委任契約」を結びます。
管理職とは異なり、役員には雇用保険が適用されないので、労災も失業手当も受けることはできません。
役員に昇格することで適用される規則が変わるので、改めて契約形態の違いについて確認しておきましょう。
管理職と役員の「責任範囲」の違い
先程も解説したように、管理職から役員に昇格すると、負うべき責任範囲が広くなります。
役員は「会社に対する責任」や「第三者に対する責任」も追求される立場となるので、管理職の感覚のままでは辛い思いをしてしまう可能性が高いです。
役員への昇格を目指すのなら、管理職との責任範囲の違いについて理解しておきたいところです。
また、責任問題に発展しないよう、監視すべきポイント(従業員の違法行為など)も確認しておくと良いでしょう。
管理職と役員の違いまとめ
今回は、管理職と役員の違いについて解説しました。改めて記事の内容を簡単にまとめてみます。
- 管理職は「雇用契約」、役員は「委任契約」の関係にある
- 役員になると「従業員給与」から「役員報酬」に変わる
- 経営陣である役員は、管理職よりも責任範囲が広くなる
- 役員になるためには“経営者としての視点”が必要
役員は“管理職の延長線上にあるもの”と思われがちですが、紹介した内容から“全くの別物”ということが理解できたかと思います。
両者の違いを認識できたあなたなら、きっと管理職から役員へとキャリアアップできるでしょう。
この記事を参考に、自分が何をするべきか考えるきっかけとなれば幸いです。