管理職になると、残業代が支払われなくなるということを聞いたことがある人は多いはずです。しかし、深夜手当は管理職であっても支払われるということは意外と知られていません。
そこで今回は管理職の深夜手当が支払われるのかどうかについて、お伝えしていきます。
この記事を読めば、管理職の深夜手当について理解することが出来ます。ぜひ最後までお読みください。
深夜労働の時間の定義について
深夜労働の時間の定義は労働基準法によって定められています。その時間は以下の通りです。
- 午後10時~午前5時
- 厚生労働大臣が認めた場合は、午後11時~午前6時
厚生労働大臣が認めた場合とは、災害等の緊急事態が発生し、やむを得ず働く必要があることを指します。
午後10時~午前5時の間で働くと、一般職員であれば基準内給与時間額(時給)に125%を掛けた金額がもらえます。
また、午後10時~午前5時の間で働いたことが残業だった場合(10時出勤~18時退勤の人が午前0時まで働いた時)午後10時~午前0時の間の労働は基準内給与時間額に150%かけた金額がもらえます。
深夜手当は管理職でも貰える
さきほど一般職員の深夜労働時の手当と、深夜に残業した場合の手当をご紹介してきました。一番気になる管理職にもその手当が出るかですが、結論から言いますと支給されます!
通常一般職員には支給される残業代は支給されない管理職ですが、深夜に労働した場合は、管理職であってもその手当は支給されます。
しかし同じ管理職でも管理監督者であるかどうかによって深夜労働時の手当の金額が異なってきます。
管理監督者かどうかで深夜労働の手当と残業代の金額が変わる
管理職の深夜労働の手当は、管理監督者であるかどうかによって決まります。
労働基準法41条2号の管理監督者の該当性について、行政解釈では、「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者であって、労働時間、休憩及び休日に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にあるかを、職務内容、責任と権限、勤務態様及び賃金等の待遇を踏まえ、総合的に判断する」こととされている。
(出典:https://www.mhlw.go.jp/churoi/assen/dl/jirei27.pdf)
簡単に言いますと以下の4点を満たしていれば管理監督者ということになります。
- 労働時間、休憩、休日等決まった時間を越えてざるを得ない職務内容を行っている
- 労働時間、休憩、休日等決まった時間を越えてざるを得ない責任と権限を行っている
- 勤務時間が決められた時間に縛られずに働いている
- 賃金等が優遇されている
この4つの項目を満たしている方が管理監督者となります。この項目が一つでも満たしていない場合は管理職であっても、管理監督者ではないケースがあります。詳しくはご自身の会社の就業規則をご確認ください。
管理職の深夜手当と残業代の計算方法
管理職であっても、管理監督者であるか、そうでないかによって待遇が変わってくるとお伝えしてきました。では実際にどのように異なっているのか、計算方法をご紹介していきます。
管理監督者である管理職の場合
管理監督者である管理職の方の深夜労働時の手当の計算は、こちらになります。
- 内給基準与時間額(時給)に25%を掛けた金額
そもそも管理監督者である管理職は残業代を支給しなくても良いと、労働基準法によって定められています。しかし労働基準法の中には深夜労働をした場合の手当の支給に関する記載はありません。
そのため、深夜労働した場合の時間外分は支給されませんが、割り増し分は支給する義務があります。
管理監督者でない管理職の場合
管理監督者でない管理職の方の深夜労働時の手当の計算は、一般職員と同様です。
午後10時~午前5時の間で働くと、内給基準与時間額(時給)に125%を掛けた金額がもらえます。
また、午後10時~午前5時の間で働いたことが残業だった場合(10時出勤~18時退勤の人が午前0時まで働いた時)午後10時~午前0時の間の労働は基準内給与時間額に150%かけた金額がもらえます。
ここまで管理職の深夜労働した場合の手当ての計算方法をご紹介してきました。続いては実際に日勤の場合と夜勤の場合に分け、深夜労働した時の手当の計算をご紹介します。
管理監督者である管理職の深夜労働の手当・残業代(日勤の場合)
基準内給与時間額が2,000円の方が午前10時~午前0時まで働いたとします。先ほどもお伝えしたように管理監督者である管理職の場合は時間外手当が発生しないので、計算は以下の通りとなります。
- 2,000円(基準内給与時間額)×0.25(深夜割増分)×2時間(深夜労働時間)=1,000円
少額ですが、深夜手当は支払われます。全く支給されないのではないかと不安に思っていた方は安心してください。
管理監督者である管理職の深夜労働の手当・残業代(夜勤の場合)
基準内給与時間額が2,000円の方が午後10時~午前7時まで働いたとします。夜勤勤務で働いた場合の計算は以下の通りです。
- 2,000円(基準内給与時間額)×0.25(深夜割増分)×7時間(深夜労働時間)=3,500円
管理監督者である管理職の方は、時間を問わずに勤務するケースが想定されます。上記のように深夜メインで働いたとしても深夜割増分のみが追加で支払われます。
管理監督者でない管理職の深夜労働の手当・残業代(日勤の場合)
管理監督者でない管理職の方は、一般職員と同様に残業代も支給されますので、計算方法が変わってきます。
基準内給与時間額が1,500円の方が平日に午前10時~午前0時まで働いたとします。所定労働時間は午前10時~午後7時とします。この場合の計算方法は以下の通りです。
- 1,500円(基準内給与時間額)×1.25(時間外手当割り増し分)×3時間(残業時間)=5,625円
- 1,500円(基準内給与時間額)×1.50(時間外+深夜割り増し分)×2時間(残業時間)=4,500円
- 合計:10,125円
こちらは深夜手当と残業代が含まれますので、かなりの金額が手当として支払われます。
管理監督者でない管理職の深夜労働の手当・残業代(夜勤の場合)
基準内給与時間額が1,500円の方が平日に午後10時~午前7時まで働いたとします。所定労働時間は午後10時~午前7時とします。この場合の計算方法は以下の通りです。
- 1,500円(基準内給与時間額)×1.25(深夜手当割り増し分)×7時間(深夜労働時間)=13,125円
午前5時~午前7時までの時間は、割り増し分はありませんので手当として追加されることはありません。手当ての金額だけで比べると管理監督者でないほうが良いように思うかもしれません。
しかし管理監督者の方は、「役職手当」が支給され、一般職員よりも給料面で優遇されています。そのため給料で一般職員よりも少ないというケースはほとんどありませんので安心してください。
深夜手当が支給されていない人が見るポイント
管理監督者であっても深夜労働分の手当てが支給されると、ここまでお伝えしてきました。しかし中には支給されないというケースも実際は存在します。
そのような方は、勤めている会社の就業規則をご確認ください。就業規則の中に、管理監督者の給与の中身が記載されています。
その中に深夜労働10時間分の手当を含むという文言があれば、予めあなたの給料には深夜手当が含まれていることになります。そのような方は、深夜労働時間が10時間を超えて初めて、深夜手当が支給されます。
まとめ
管理職の深夜労働の残業代についてご紹介してきました。最後にご紹介した内容をおさらいしていきます。
- 管理監督者かどうかで手当の金額が異なる
- 管理監督者の場合は内給基準与時間額(時給)に25%を掛けた金額
- 管理監督者でない場合は基準内給与時間額に25%を掛けた金額(深夜の時間に残業した場合は50%)
このように管理監督者であるか、そうでないかによって金額は変わってきます。
また、予め管理監督者である管理職の給料の中に深夜労働時間分が含まれているケースもあります。ぜひこの機会にあなたの会社の就業規則をご確認してみてください。