転職を有利に進める条件として、よく挙げられるのが「TOEIC」。近年はグローバル化が進んでいることもあり、企業の応募条件になっているケースも少なくありません。
とは言え、初めて転職するあなたは「どの企業でもTOEICは強みになるのかな」「何点以上あれば有利になるんだろう」と気になっているのではないでしょうか。
そこで今回は、転職におけるTOEICの有利性をはじめ、企業が求めるスコアの目安を解説します。この記事を読めば、あなたが転職を有利に進められるのかどうかが分かるので、ぜひ参考にしてみてください。
(トップ画像出典:https://pixabay.com/ja/illustrations/%e4%bb%95%e4%ba%8b-%e7%a4%be%e4%bc%9a%e4%ba%ba-%e6%88%90%e5%8a%9f-%e6%9b%b2%e7%b7%9a-1989126/)
どの企業に転職するにもTOEICは有利に働きやすい?
一般的に“TOEICは転職に役立つ”と言われていますが、「外資系企業とか海外部門とかじゃないと、あんまり役に立たないのでは?」と考える方も少なくありません。
確かに英語が必要なさそうな業界・職種である場合、“TOEICが転職で有利になるとは思えない”と考えるのは自然なことでしょう。
しかし、IIBC(一般財団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会)の『英語活用実態調査2019』では、今後のビジネスパーソンにとって重要な知識やスキルの第1位が「英語」となっていました。
回答企業の87.6%が英語を重要視しており、更に今後強化する必要がある知識やスキルについても「英語」が第1位となっています。
(参考:https://www.iibc-global.org/library/default/toeic/official_data/lr/katsuyo_2019/pdf/katsuyo_2019_corpo.pdf)
全ての企業がTOEICを重視する訳ではないですが、上記の調査結果を見る限り、多くの企業でTOEICは「有利に働きやすい」と言えるでしょう。
なぜ転職で有利に働く?企業がTOEICを重要視する理由
英語力を証明するTOEICですが、なぜ多くの企業は選考でTOEICを重要視しているのでしょうか。その理由として以下の3つが挙げられます。
- 即戦力となる人材を探しているため
- 応募者の性質を確認するため
- 「教育コストを抑えたい」という思惑があるため
即戦力となる人材を探しているため
中途採用を行う企業のほとんどは、応募者を即戦力として見ています。そして即戦力に相応しい人材なのかを判断するため、TOEICスコアをチェックしているのです。
前述したように、多くの企業は英語を“重要な知識・スキル”と考えています。グローバル化が進んでいる今、英語力がある人材は即戦力として大いに期待できるでしょう。
逆に言えば、TOEICスコアが高ければ高いほど、応募者は人事から高い評価を受けやすくなると言えます。
応募者の性質を確認するため
TOEICでハイスコアを取るためには、それなりの努力が必要です。高得点を目指すほど、より高い集中力が求められますし、自分の弱点と向き合う必要もあります。
そのため、企業は応募者のTOEICスコアから「努力ができる人」「集中力がある人」といった予想が立てられます。単に英語力を測るだけでなく、応募者の性質を確認するための基準にもなるのです。
ですので、英語の必要性が低い企業でも、TOEICスコアで良い印象を与えられる可能性は十分にあります。
「教育コストを抑えたい」という思惑があるため
企業がグローバル人材を育てる場合、教育にかかる費用は1人あたり数十万円にも上ります。莫大な教育コストを抑えるため、企業はTOEICスコアに注目し、既に英語力がある人材を採用したいと考えるのです。
また、どれだけ質の高い教育体制を整えても、やらされている状態になってしまってはグローバル人材は育ちません。しかし、予め英語力のある人材を採用しておけば、人材育成に労力や時間を費やす必要がなくなります。
つまり、企業にとってTOEICスコアは、応募者の能力を測るだけでなく、コスト削減においても重要な基準になるのです。以上の点から、転職においてTOEICは「有利になる」と言えます。
TOEICが転職で有利になるのは何点以上から?
ここまでの内容で、TOEICが転職で有利になることが理解できたかと思います。では、TOEICで何点以上を保持していれば、転職を有利に進められるのでしょうか。
IIBCの『英語活用実態調査2019』を見てみると、企業が要件・参考とする平均スコアが「620点」と記載されています。(英語を使用する部署の中途採用の場合)
また、企業が海外部門の社員に期待する平均スコアは「690点」となっていました。
(参考:https://www.iibc-global.org/library/default/toeic/official_data/lr/katsuyo_2019/pdf/katsuyo_2019_corpo.pdf)
上記はあくまで平均値のため、外資系企業などでは更に高いスコアが求められると考えられます。
ですので、実践的に英語を使う仕事がしたい人は「700点以上を目安にするのが望ましい」と言えるでしょう。
企業が応募者に求めるTOEICの基準点
前章では“転職で有利になるTOEICスコアの目安”を紹介しましたが、企業の中には応募者に求めるスコアを開示している場合があります。
実際に“どのような企業がどれほどのスコアを求めているのか”をイメージしてもらうため、いくつかの企業の基準点を紹介していきたいと思います。
600点以上 | 出光興産、王子製紙、大正製薬、ニトリホールディングス、大和ハウス工業など |
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650点以上 | アサヒビール、佐川グローバルロジスティクス、シチズンホールディングスなど |
700〜730点以上 | ファーストリテイリング、ソフトバンク、武田薬品、ヤマト運輸、東京電力、NTT東日本、三菱自動車(事務職)など |
800点以上 | 韓国LG、韓国ヒュンダイ、野村不動産など |
860点以上 | 野村ホールディングス(グローバル社員)、NTTコミュニケーションズ、韓国サムスン、パナソニック(国際広報担当)など |
(参考:https://www.enworld.com/blog/2020/08/toeic-score)
上記は一部の企業に過ぎないですが、同じ業界や競合他社に転職する場合にも、同等のスコアが求められると考えておくのが賢明でしょう。
TOEICの点数から分かる英語力の目安
ここまで“TOEICは転職で有利になる”と紹介してきましたが、それはあくまで企業が求める英語力を満たしている場合のみです。
あなたが点数に自信を持っていても、企業にとっては物足りないと感じる場合もあるので、点数から分かる英語力の目安も把握しておきましょう。
600点以上の英語力の目安
TOEICスコアが600点以上の場合、ある程度の英語が理解できるレベルにあります。
長文であっても聞き取りができ、英会話が成り立つレベルにありますが、複雑な英語を理解するのは難しいでしょう。
企業が要件・参考とする平均スコアが「620点」なので、このレベルなら企業から評価を得られる可能性が十分にあります。
但し、TOEICの平均スコアが約600点となっているため、評価に値しないと判断されるケースも少なくありません。
700点以上の英語力の目安
TOEICスコアが700点以上の場合、複雑な英会話ができ、読み書きも不自由なくできるレベルにあります。
“ビジネスで通用する段階にある”と言えるので、より転職を有利に進めることができるでしょう。
尚、外資系企業や海外部門に転職する場合、最低限欲しいスコアが700点以上になります。
もちろん企業によって求めるレベルは異なるので、事前に採用情報もチェックするようにしてください。
800点以上の英語力の目安
TOEICスコアが800点以上の場合、文章の細部まで理解でき、ビジネスシーンでの意見交換もこなせるレベルにあります。
日系企業への転職なら周りの応募者と差を付けることができ、外資系企業においても採用基準をクリアできる場合がほとんどです。
英語力を高く評価してもらえるレベルにあるので、より転職を有利に進められるでしょう。
900点以上の英語力の目安
TOEICスコアが900点以上の場合、英語において困ることがほとんどなく、複雑な会話もスムーズにこなせるレベルにあります。
外資系企業のどの業務でも対応することが可能で、企業側も即戦力として十分に期待してくくれます。
“相当な英語力がある”とみなされるので、大幅に採用される確率が上がると言えるでしょう。
TOEICはキャリアアップにも有利に働く場合がある
TOEICは“転職を有利に進める条件”として注目されていますが、実はキャリアアップにおいても有利に働く場合があります。
と言うのも、企業が「昇格・昇進」や「海外出張者」を決めるとき、TOEICスコアを要件または参考にする場合があるからです。
実際にIIBCの『英語活用実態調査2019』を見てみると、主任・係長への昇進・昇格を決めるにあたり、回答企業の38.0%がTOEICスコアを参考にしていると答えています。
また、海外出張者や海外赴任者を決める際は、ほぼ半数の会社がTOEICスコアを要件・参考にしているようです。(上記の結果には“新たに要件・参考とする可能性がある企業”も含まれています。)
(参考:https://www.iibc-global.org/library/default/toeic/official_data/lr/katsuyo_2019/pdf/katsuyo_2019_corpo.pdf)
IIBCの調査結果を見る限り、キャリアアップを目指している方にも、TOEICスコアは「重要な要素になる」と言えます。
転職を有利に進めたい!最短で点数を上げる3つのコツ
ここまでの内容から分かるように、TOEICスコアが高ければ高いほど、転職やキャリアアップは有利になります。
では、どうすればTOEICでハイスコアを取ることができるのでしょうか。最短で点数を上げたい方は、以下の3つのコツを意識してみると良いでしょう。
- 目標の点数から逆算して学習スケジュールを立てる
- TOEICの出題傾向を把握して対策する
- 点数が伸びやすいリスニングに注力する
最短でTOEICスコアを上げるためには、何よりも“効率良く勉強する”ことが大切です。
次の章からは、3つのコツについて詳しく解説していくので、ぜひあなたの学習にも役立ててみてください。
①目標の点数から逆算して学習スケジュールを立てる
TOEICでハイスコアを狙うためには、目標から逆算して学習スケジュールを立てることが重要です。
と言うのも、英語は習慣化して初めて身に付くものであり、詰め込みの勉強では高得点を狙うのが難しいからです。
尚、TOEIC専門講師であるTEX加藤氏は、マイナビニュースのインタビューで以下のような発言をしています。
TOEICの魅力は、勉強すれば確実にスコアが伸びることにあると思います。一夜漬けでは、英語力がない段階で高得点は取ることは難しいですが、勉強すれば確実にスコアが上がります。私の指導経験では、毎日3時間勉強すると、3カ月間で約100点スコアがアップするという結果がでました。つまり、200~300時間勉強で100点もアップすることができるのです。
出典:https://news.mynavi.jp/article/20120727-tex/
TEX加藤氏によると、指導の経験から「200〜300時間の勉強で100点アップが期待できる」と述べています。ですので、この考えをもとに逆算して必要な勉強時間を算出してみると良いでしょう。
例えば、600点を保持している方が800点を狙う場合、400〜600時間の勉強が必要になります。(200〜300時間×2=400〜600時間)
仮にこの目標を半年後に達成する場合、1日に必要な勉強時間は「約2.2〜3.3時間」です。(400〜600時間÷6ヶ月÷30日=約2.2〜3.3時間)
TEX加藤氏も述べているように、TOEICは勉強すれば確実にスコアを上げられます。そのためには、英語を習慣化できる“無理のないスケジュールを立てる”ことが非常に重要です。
ちなみにIIBCの『英語活用実態調査2019』では、800点以上を取っている66.7%の方が「通勤の途中・移動中」に勉強していると答えています。
また、主な勉強場所が「自宅」「電車・バスの車内など」となっていることから、隙間時間を上手く活用できるかどうかが習慣化のポイントになりそうです。
(参考:https://www.iibc-global.org/library/default/toeic/official_data/lr/katsuyo_2019/pdf/katsuyo_2019_corpo.pdf)
②TOEICの出題傾向を把握して対策する
最短でハイスコアを取るためには、TOEICに特化した勉強をするのが近道です。そのためには、TOEICの出題傾向を頭に入れ、対策を練る必要があります。
尚、先程も紹介したTOEIC専門講師のTEX加藤氏は、効率良く点数を上げるコツとして以下のように述べています。
TOEICテストは、出題される語彙(ごい)や文法の範囲が限られています。補助教材は、TOEICに特化したものを使ったほうが効率的です。文法を例に取ると、パート5の短文穴埋め問題は、大別すると10パターンもありません。
パート5の40問の設問中、語彙の問題が約15問、品詞の問題が約12問。残り13問は、前置詞、接続詞などに関するものです。単語もアカデミックなものは出てきません。とくに時間に限りのある社会人は、TOEICに特化した信頼のおける参考書を徹底的にやることをお勧めします。
出典:https://news.mynavi.jp/article/20120727-tex/
上記の解説から、TOEICスコアを上げるためには「問題パターンを把握して、TOEICに特化した参考書をやり込むことが必要」と言えます。
そうすれば、覚えるべきポイントだけを無駄なく勉強できるので、効率良く点数を稼ぐことが可能です。
ちなみにTOEICの出題形式と構成については、IIBCの公式サイトから確認できます。サンプル問題も掲載されているので、ぜひそちらも学習に役立ててみてください。
③点数が伸びやすいリスニングに注力する
日本人はリスニングに対するに苦手意識があり、リーディングを中心に勉強する方も少なくありません。
しかし、一般的にリスニングの点数は「リーディングよりも伸びやすい」と言われています。ですので、短期間でTOEICの点数を上げたいのなら、リスニングに注力するのがベストです。
実際にTOEIC専門講師のTEX加藤氏も、リスニングに対して以下のように発言しています。
短期間で、確実にスコアを伸ばすことができるのはリスニングです。リスニングに対する苦手意識から、リーディングを中心に勉強する人が多いのですが、TOEICは、計200問中リスニング100問、リーディング100問と、非常にリスニングの比重が高いテストです。また、リスニングの英語はリーディングの英語よりも比較的簡単なので、得点が伸びやすい傾向があります。
出典:https://news.mynavi.jp/article/20120727-tex/
ちなみに英語のリスニング力を向上させるためには、「シャドーイング(音声を聞いて即座に復唱すること)」を習慣化するのが効果的です。
繰り返しシャドーイングをすることで、徐々に英語のスピードに慣れていき、聞き取れなかった単語が分かるようになっていきます。
ナレーターのように読めるようになるまで練習すれば、確実にリスニングセッションのスコアは上がります。
また、自分で繰り返し発音することで、スピーキング力の向上にも繋がります。つまり、点数アップだけでなく、実践的な英語力も身に付けられるのです。
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まとめ:TOEICを活かせば転職を有利に進めやすい
今回は、転職におけるTOEICの有利性や、企業が求めるスコアの目安を紹介しました。改めて記事の内容を簡単にまとめてみます。
- 多くの企業でTOEICスコアは有利に働きやすい
- TOEICスコアを活かすなら最低でも600点以上は必要
- TOEICはキャリアアップにも有利に働く場合がある
- TOEICの点数を上げるためには効率良く勉強することが重要
グローバル化が進んでいることもあり、近年は多くの企業がTOEICスコアを重要視しています。
英語力はもちろん、あなたの性質も評価してくれる可能性があるので、ぜひTOEICスコアを活かして転職を成功させましょう。