「会社の人事部門で採用を担当しているのだが、近頃は人手不足で困っている。正社員登用制度を見直し、優秀な人材を確保したい。」
現在、多くの日本企業が陥っている「人手不足」という状況下では、募集の際に正社員登用制度をアピールしても、企業は思うように応募者が集まらない事態に陥っていることでしょう。
ただ、応募者を集めるだけでも厳しい現在の状況にも関わらず、正社員登用制度を上手く活用し、優秀な人材を確保している企業が存在するのも事実です。
今回は、日本における正社員登用制度の現状を解説しながら、優秀な人材を確保し続けている企業の事例を紹介していきますね。
この記事を読むことで、正社員登用制度を上手に活用しながら人材確保ができるようになります。ぜひご覧ください!
日本における正社員登用制度の現状
現在の日本における正社員登用制度は、一体どのような状況でしょうか?
国内最大手の調査会社である「帝国データバンク」が行ったアンケートによると、調査対象となった約1万社の日本企業のうち、ほぼ半数の企業が正社員の不足を訴えています。
正社員が不足していると答えた企業の割合は50%前後となり、非正社員が不足していると答えた企業の割合である30%前後を大きく上回っています。
なので人材難に陥っている多くの日本企業は、正社員登用制度を導入することで非正社員を正社員へと移行させ、人材の確保を図ろうとしています。
(出典:https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p191105.pdf)
やはり近年は人材難を解消するために、正社員登用制度を導入する企業が一般的となっていますね。
ただ、全ての日本企業が正社員登用制度を有効活用して、人材難を解決している状況とは言えません。
正社員登用制度を導入して人手不足の問題を解決するためには、まず正社員登用制度のメリットとデメリットを理解した上で、適切に運用する必要があります。
正社員登用制度のメリット
正社員登用制度を導入するメリットとして、業務に習熟した人材の確保が容易だという点が挙げられます。
特に企業の立場からすると、従業員を非正規社員として雇用している間に職務遂行能力を見極めることができるので、採用後に発生しがちな企業と従業員のミスマッチを防ぐことが可能です。
非正規社員とは、一般的に契約社員やパートタイマー、アルバイト、派遣社員のように、期間が定められた雇用契約で働く社員のことを指します。
また、正社員登用制度における従業員側のメリットは、在籍している会社への帰属意識が高まり、仕事に対するモチベーションが上がる、という点です。
特に正社員登用制度を導入している企業では、非正規社員でも正社員として働ける可能性が与えられるので、従業員は将来の昇給や賞与を期待し、結果的に会社で働く意欲が高まります。
正社員登用制度のデメリット
反対に、企業における正社員登用制度のデメリットは、非正規社員を正社員として登用することで、将来の人件費が増えるという点です。
また従業員にとってのデメリットは、正社員に登用されると企業が要求する残業や異動に応じないといけなくなったり、部下やアルバイトの管理業務が増える、という点です。
人事担当者は、正社員登用制度のメリットとデメリットをしっかりと把握した上で、人材不足を解消しなければなりませんね。
それでは、正社員登用制度のメリットを上手に活用して人材不足を解消するには、一体どうすれば良いのでしょうか?
次の項目からは、実際に人事担当者が正社員登用制度を有効活用しながら、人材不足の解消に取り組んでいる事例を5つ紹介していきます。
人事担当者が正社員登用制度を有効活用している事例①
まず初めに紹介する事例は、アパレル業界において世界最大の規模を持つ「ユニクロ」の正社員登用制度です。
ユニクロは人材不足を解消するために、2007年から「地域限定正社員制度」と呼ばれる制度を導入しています。
地域限定正社員とは、文字通り転居を伴う転勤がない正社員のことで、非正規社員が正社員になることで発生する「異動」の不安を、ユニクロはこの地域限定正社員制度を導入することで解消しています。
その結果ユニクロでは、半年に一度の頻度で正社員登用試験が実施され、毎回約100名の非正規雇用者が正社員に登用されています。
ユニクロでは、非正規社員が抱える不安を取り除くことで、人材不足の解消に取り組んでいるんですね。
人事担当者が正社員登用制度を有効活用している事例②
2つ目に紹介する事例は、メガネ販売の事業を展開している「株式会社Zoff(ゾフ)」の正社員登用制度です。
株式会社Zoffは、正社員登用試験を年2回実施しており、アルバイトから正社員を目指すことができる仕組みを構築しています。
アルバイトとしてZoffに入社すると、まず3ヶ月に一回の頻度でスキル習得のための本社研修が行われ、入社してから一年以上経過したタイミングで、正社員登用試験を受けることができます。
またZoffでは、正社員である「店長」「マネージャー」といった上級職への道を明確に提示されているので、非正規社員はモチベーションを下げることなく、業務を継続させることが可能です。
Zoffでは、非正規社員のスキル習得に対する意欲を上げ、正社員の定着を図っているんですね。
人事担当者が正社員登用制度を有効活用している事例③
3つ目に紹介する事例は、東京ディズニーランドを運営している「オリエンタルランド」の正社員登用制度です。
オリエンタルランドといえば、2016年に「800名以上の契約社員を正社員として登用する」と発表し、話題となりました。
またオリエンタルランドは、2018年に「OLCキャリア・カレッジ」と呼ばれる教育プログラムを開講し、キャストと呼ばれる従業員に対してスキルアップを促しています。
OLCキャリア・カレッジは、キャリア構築に関するプログラムで、内容は自己分析のワークショップや個別面談が中心です。このプログラムを通じて従業員は、正社員への道を具体的に想像することができます。
オリエンタルランドでは、従業員のキャリア構築を手助けすることで会社に対する帰属意識を高め、安定して人材を確保しているんですね。
人事担当者が正社員登用制度を有効活用している事例④
4つ目に紹介する事例は、世界最大手のタイヤメーカである「ブリヂストン」の正社員登用制度です。
ブリヂストンでは、正社員登用試験を年2回実施しており、年間約120名以上の従業員を正社員に登用しています。
ブリヂストンは、非正規雇用者である期間工員を数多く抱えていますが、製造現場における安全や防災に関する基礎知識をマンツーマンで教えるなど、人材育成に力を入れている企業です。
またブリヂストンでは、社内運動会や工場ごとにお祭りがあったりと、定期的にイベントを行うことで従業員の満足度を上げています。
正社員登用率も95%と高い水準にあり、長い目で見て人材確保を意識しているのが伺えますね。
人事担当者が正社員登用制度を有効活用している事例⑤
最後に紹介する事例は、世界規模でコーヒーストアを展開している「スターバックスコーヒー」の正社員登用制度です。
正社員登用制度を取り入れているスターバックスでは、アルバイトでも業務遂行能力を適切に評価する制度が整っています。
スターバックスのアルバイトは、まず「バリスタ」と呼ばれるポジションからスタートし、経験を重ねて新人教育などの業務ができるようになると、「シフトスーパーバイザー」へと昇格します。
「バリスタ」は、スターバックスにおけるキャリアの入り口にあたり、「シフトスーパーバイザー」は、商品発注やシフト作成、現金管理の業務を通じて店舗運営マネジメントに携わるポジションです。
またスターバックスでは、シフトスーパーバイザーとして基本的なマネジメント業務の実践ができる、と上司に判断された場合、アルバイトにも正社員登用試験に挑戦する機会を与えています。
このように、アルバイトでも目標を持ちながら継続して働ける仕組みのおかげで、スターバックスの離職率は、外食産業において驚異的な4.8%という数値を残しています。
ちなみに、外食産業における大卒3年後の離職率は40%以上なので、スターバックスがいかに従業員のキャリアパスを長期的な目線で考えているのか、容易に想像できますね。
人事担当者が正社員登用制度を運用する際のポイント
ここまで紹介しました事例をもとに、正社員登用制度を運用する際の注意点を挙げると、やはり「現場のモチベーション管理を徹底する」ということです。
外資系企業であるスターバックスの事例でも示されているように、海外の企業では従業員の能力や実績を適切に評価する仕組みが整っており、社員のモチベーションを維持しています。
なので従業員を評価する立場の方は、年齢や経歴などの先入観にとらわれない適切な評価制度を整えて、正社員登用制度を運用しなければなりません。
まとめ
今回は、人材育成に力を入れている企業を紹介しながら、正社員登用制度について解説しました。要約すると以下の通りです。
- 地域限定正社員を設置し、勤務地の希望を柔軟に受け止める
- 正社員登用後のキャリアを明確に提示する
- 人材育成に力を入れ、モチベーションの向上を図る
現在日本では、どの企業も人手不足で大変苦しい状況ですが、社員教育に力を入れることで優秀な人材を確保し、人材難を乗り切ろうとする企業も存在します。
この記事を参考に、自社の正社員登用制度を上手に活用することで、人手不足を解決する手助けになれると幸いです。