「最近、部下の様子がおかしい。もしかしたらうつ病なのかもしれない…。」と、部下のことで悩む上司もいるのではないでしょうか。
うつ病は、本人の心と身体を苦しめる病気です。現代日本において、医療機関にかかっているうつ病患者数は100万人以上にも登るとされています。そのため、決して他人事ではない病気です。
ある日突然、誰よりも真面目に仕事をこなす部下が、出社しなくなるケースもあるのです。優秀な部下がいなくなることで、上司や同僚、ひいては会社自体に大きな損害をもたらします。
そこでこの記事では、部下がうつ病になってしまう原因と、上司が今すぐできる対策方法を教えます。この記事は、以下の順番で内容を解説していきます。
- うつ病の病気に関する解説
- うつ病になりやすい部下の特徴や、発症しやすい場面
- 上司が部下に対してできる3つの対策方法
この記事を読むことで、うつ病に関する知識や対策方法を理解することができます。部下のうつ病になってしまう原因を知ることで、上司は働きやすい環境を作り上げることができますよ。
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うつ病は、誰にでもなりうる身近な病気
うつ病は、はっきりとした原因は分かりませんが、脳の神経伝達物質の働きが悪くなり、ストレスや身体の病気、環境の変化など様々な要因が重なって発病するとされています。
生涯に1度はうつ病になる人の割合は、15人に1人、医療機関にかかっているうつ病患者数は100万人以上いるとされています。さらに、医師を受診していないうつ病患者は5人中3人の割合とされているのです。
したがって、うつ病は誰にでもなりうる身近な病気と言えるのです。決して他人事ではありません。
出典:https://www.cocoro-h.jp/untreated/overview/population.html
うつ病が、誰にでもなりうる身近な病気であることを理解していただけましたか。次の項目は、うつ病の心と身体の症状についてそれぞれ解説していきます。
うつ病になってしまったら、本人がどのような苦しみを抱えているのかを理解できるので、読んでください。
うつ病の心と身体の症状をそれぞれ解説
うつ病を発症してしまうと、本人の心と身体にそれぞれ異常が発生します。具体的な症状を、心と身体の症状に分けてそれぞれ説明すると次の通りです。
- 不安や焦りを感じる
- どこかへ消えてしまいたいと思うようになる
- 自分が興味のあったことへの意欲がなくなる
- やる気がなくなり、物事を面倒に感じるようになる
- 何でも自分のせいにするようになる
- 人との会話内容や本の内容が頭に入らない
- 睡眠障害が起きる
- 食欲がなくなる
- 疲労感やだるさがある
- 動悸や息苦しさ、喉の渇きを感じる
- 頭痛や背中の痛み、首筋や肩こりを感じる
うつ病と聞くと心の病だけに注目されがちですが、身体にも様々な異常をもたらすのです。
うつ病は、本人の心と身体を苦しめる、つらい病気であることが分かりましたか。次の項目は、うつ病になりやすい部下の特徴を紹介します。
特徴を理解することで、どんな部下がうつ病になりやすいかを具体的にイメージできます。
真面目で責任感のある部下は、うつ病になりやすい
意外に思われるかもしれませんが、うつ病になりやすい部下は、真面目で責任感のある性格であることが多いです。
うつ病になりやすい部下は、プレッシャーに弱く、打たれ弱い人がなるものだと思った人もいるのではないでしょうか。では、うつ病になりやすい部下は具体的にどのような性格かを例に挙げると、以下の通りです。
- どのような仕事でも決して手を抜かない完璧主義
- 無茶な仕事でも必ずやり遂げようと最善を尽くす
- 人前で弱みを見せたがらないので、グチや弱音を滅多に吐かない
どのような仕事でも完璧に終わらせないと気が済まず、弱音を一切吐かないので、心や身体のうちに溜まったストレスを全て抱え込んでしまうのです。
そうして無理を重ねていくうちに、部下はうつ病になってしまい、心と身体が壊れてしまうのです。したがって、真面目で責任感のある部下ほど、上司は細心の注意を払う必要があります。
真面目で責任感のある部下ほど要注意です。次の項目からは、どんな場面で部下がうつ病になってしまうのかを、仕事面とプライベートにそれぞれ分けて説明していきます。
うつ病は、仕事面だけでなくプライベートにおいても、あるきっかけから発症してしまう危険性があるのです。
仕事面での出来事で部下はうつ病を発症することがある
まず、仕事面において部下がうつ病を発症してしまうケースを紹介していきます。具体的には、仕事において以下の出来事があったときにうつ病を発症してしまう危険性があるのです。
- 仕事が忙しい時に、さらに新しい仕事が振られた時
- 決算期などの繁忙期が落ち着いた時
- 昇進して責任が大きくなった時
- 仕事で大きな失敗をした時
- 今までに経験のない仕事を担当した時
うつ病になりやすい部下は、真面目で責任感のある性格が多いです。
そのため、新たに仕事を振られた時や昇進した時、経験のない仕事を任された時には「上司の期待に応えなければならない。」と、責任を感じてしまいます。
また、真面目で責任感のある部下は、全力で仕事に打ち込んだ後は燃え尽きるかのように気力がなくなってしまうことがあります。
さらに、完璧主義のため、大きな失敗をした時には「こんなはずではない。」と、失敗から上手く立ち直れません。そうして、部下はそのまま心と身体を崩してしまうのです。
プライベートでの出来事で部下はうつ病を発症することがある
うつ病は仕事面だけでなく、プライベートの出来事によって発症してしまうこともあります。具体的に、プライベートにおいて部下がうつ病を発症してしまう例を紹介します。例を挙げると以下の通りです。
- 家族や恋人、親友を亡くしてしまった時
- 家族や親族の介護が必要になった時
- 災害や事故、事件に遭ってしまった時
もし、部下が上司に何気ない会話の中で「最近、父が亡くなりまして…。」など、親しい人が亡くなったという話をしていたら要注意です。
部下がいつもと変わりない顔をしていたとしても、心に深い傷を負っている可能性が高いです。
また、部下が家族の介護が必要になった場合や、事故などに遭った場合も同様に、上司は部下の様子をよく観察する必要があります。
部下がうつ病になってしまう出来事には、仕事面とプライベートの2つがあることが分かりました。
次の項目からは、仕事で部下がうつ病になったと思われるときに発するサインを紹介します。上司は、部下のうつ病のサインを見逃さないようにしてください。
仕事において、部下がうつ病を発症したと思われるサイン
部下がうつ病を発症したと思われる時に、仕事においてあるサインを発することがあります。サインの具体例を5つ挙げて説明すると、次の通りです。
- 遅刻や週2日以上の欠勤が続いている
- 仕事の期限が遅れるようになった
- 上司や同僚との会話を避けるようになった
- 表情が暗く、口数が減った
- 苛立っている様子が見られる
上司は、部下が遅刻や週2日以上の欠勤が続いていることや、仕事の期限が遅れることは察しやすいかと思います。
一方で、部下の表情が暗いまま会話がなくなるという様子は、上司が普段の部下の様子を観察していないと、部下が発するサインをつい見逃しがちです。
上司は、部下がうつ病を発症したと思われるサインを発していたら、赤信号が灯っていると見たほうがいいです。
上司が部下に対してできることは?
上司は、部下が安心して仕事ができるように職場環境を整える必要があります。そこで、日頃から部下のうつ病に関する対策について検討しましょう。
次の項目からは、部下のうつ病に関する対策方法を、3つのケースに分けてそれぞれ具体的に説明していきます。対策方法とは、以下の通りです。
- 【部下がうつ病になることを未然に防ぐ】日頃からの会話を心がける
- 【部下がうつ病になってしまった時】病院の受診をすすめる
- 【部下がうつ病から復職した時】産業医と連携して体制を整える
まずは、部下がうつ病になることを未然に防ぐ対策方法について紹介します。
上司ができる部下のうつ病対策①日頃からの会話を心がける
上司は、部下がうつ病にならないように、日頃からの会話を心がけるようにしましょう。上司が常日頃から部下に声をかけることによって、部下のいつもの様子を把握できます。
そうすれば、上司は部下の何気ない変化を察知することができるのです。
もし、部下が不調な様子で仕事をこなしているのなら、次のように声をかけるといいです。
最近、顔色が悪いみたいだけど大丈夫かな。何か、仕事もやりにくそうに見えるけど、何か困っていることがあるのかい?
上司は、部下を頭ごなしに厳しく叱ってはいけません。上司が部下を厳しく叱ることで、部下は上司へ悩みを打ち明けにくくなり、お互いの信頼関係が作れなくなります。
そのため、上司は部下を心配しているという姿勢が伝わるように、シンプルな言葉を掛けるといいです。
上司ができる部下のうつ病対策②病院の受診をすすめる
部下の様子が目に見えておかしいと感じているなら、もしかしたら、部下はうつ病を発症しているかもしれません。そんな時には、上司は部下に病院への受診をすすめましょう。
ただし、上司が部下に「病院へ行ったらどうか。」と声をかけても、部下は「いえ、大丈夫です。」と答えることでしょう。
うつ病を発症していると思われる人は、無理をしがちです。たとえ本人が心身の不調を感じたとしても、「問題ありません。」の一点張りで、無理やり出社します。
そんな時には、上司は部下へ次のように声をかけるといいでしょう。
君はよくがんばっているね。でも、まずは君の将来のことを考えたほうがいいんじゃないのかな。最近、具合が悪そうに見えるからね。
ゆっくり身体を休めてから、仕事に専念してみないかい。少し抵抗があるかもしれないけど、一回、病院へ受診してみたらどうだい?
上司が部下の将来を気にかけて、病院への受診をすすめる声掛けなら、部下も「上司は、私の将来のことを考えてくれているんだな…。」と感じ、病院へ受診しに行ってくれるでしょう。
上司ができる部下のうつ病対策③産業医と連携して体制を整える
部下がうつ病を発症し、1年に渡る療養生活から復職したら、上司は産業医と連携して部下が安心して働ける体制を整えましょう。上司は産業医と連携し、部下の仕事に関して次のことを検討する必要があります。
- どのぐらいの業務量にするか
- 就業時間はどのぐらいにするか
- まずどんな仕事を割り当てるのか
また、必要に応じて産業医だけでなく、人事部やさらに上の役職の社員、部下の家族とも連携を取って行きましょう。
仕事面だけでなく、プライベートにおいても部下をサポートする体制を整えることで、部下はうつ病から復職した後でも安心して働くことができます。
ただし、上司は体制を整えた後でも部下の様子に注意を払ってください。復職後の部下は、また無理を重ねてしまう可能性があるからです。
もし、部下が定時を過ぎても残業していたら、上司は次のように声をかけてみてください。
お疲れ様。そろそろ時間だよね。もう上がっても大丈夫だよ。
上司が部下を自ら帰りやすい雰囲気を作り上げることで、部下も仕事を切り上げるべきかの判断がしやすくなります。
まとめ
ここまで、部下がうつ病になったと思われる時の対策方法について解説していきました。うつ病になりやすい部下は、真面目で責任感のある性格であることが多いです。
もし、部下が仕事で大きな失敗をした時や、今までに経験のない仕事を担当することになったら、うつ病になるリスクが上がります。
また、プライベートにおいて、部下の家族や親友を亡くしてしまった時や、部下が災害や事故に遭ってしまった時も要注意です。
そのため、上司は部下がうつ病にならないように、状況に合わせて以下の3つの対策を行いましょう。
- 【部下がうつ病になることを未然に防ぐ】日頃からの会話を心がける
- 【部下がうつ病になってしまった時】病院の受診をすすめる
- 【部下がうつ病から復職した時】産業医と連携して体制を整える
特に、日頃からの会話を行うことは、上司が部下の様子の変化を察することができるので、うつ病を未然に防ぐうえでは重要です。
部下がうつ病から復職した後も、上司は部下が仕事をしやすくできるようにサポートする必要もあります。上司は気を抜かずに、部下を支えてあげられるように心がけましょう。
上司は、部下がうつ病になってしまう原因や対策方法を知ることで、働きやすい職場環境を作り上げることができます。
部下たちと共に、安心して働ける職場環境の実現を目指していきましょう。