非常に残念なことに、仕事が原因となった自殺者は年々増加しています。
「自分の部下は大丈夫だろうか」「もし自分の部下が自殺してしまったらどうしよう」と不安になっている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、部下が自殺してしまった時に問われる、責任と対応について解説していきます。また、後半では具体的な自殺防止策も解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
(トップ画像出典:https://pixabay.com/ja/photos/%E7%B5%B6%E6%9C%9B-%E3%81%AF-%E8%87%AA%E6%AE%BA-3422885/)
部下の自殺で問われる責任
もし部下が仕事が原因で自殺してしまった場合、企業は必ず責任を問われるでしょう。内容としては、「社会的信用の低下」と「損害賠償」の2つが挙げられます。
企業は、労働者に対して心身の安全を配慮する義務があります。「安全配慮義務」を怠っていた場合、労働基準監督署から指導が入る事になりかねません。そうなると企業イメージを損ない、社会的信用の低下を招きます。
また、「安全配慮義務」を怠ったと判断された場合、遺族から損害賠償の請求を求められる可能性が高いです。賠償金は非常に高額になり、1億円を超えるケースも見られます。
そのような事態を引き起こさない為にも、部下を持つ人は部下の心身の状態を把握し、適切に管理する責任があります。
部下の自殺が職場に与える影響
部下が自殺してしまったときに起こりうる影響は、損害賠償だけに留まりません。職場に与える影響として、以下のような物があります。
- 自殺した部下と関係が深かった人を中心に、体調不良者が続出する。
- 「誰か自殺者を追い詰めのでは?」といった、犯人捜しが始まり人間関係が悪化する。
- 健康問題、人間関係の悪化によるストレスから、重大な事故に繋がる。
- 連鎖的に問題が起こることにより、また自殺者が出てしまう。
このような「負の連鎖」を断ち切る為に重要になってくるのが、事後のアフターケアです。
部下が自殺してしまったときのアフターケア
部下が自殺してしまったときのアフターケアとして、最も重要なのは、職員一人ひとりに対して適切なサポートを実施することです。
具体的には、自殺についての事実を中立的な立場で伝える事と、感情を発散しやすい雰囲気を作ることの2つです。
自殺についての事実を中立的な立場で伝えることによって、いわゆる「犯人捜し」を防止する効果があり、事後の人間関係を健全に保つ効果があります。
また、感情を発散しやすい雰囲気を作ることで、職員の体調や精神状態の異変を把握できるメリットがあります。
仕事が原因で自殺してしまう理由ワースト3
ここまでは、自殺が起きてしまった場合のリスクや対処法について解説してきました。ですが、そもそも自殺が起こらないような環境づくりの方が大切ですよね。
そこでここからは、自殺を防止するための対策法について、具体的に解説していきます。
自殺を事前に察知し食い止めるためには、原因を知ることが重要です。厚労省が発表している仕事を理由とした自殺の原因を、割合の高い順に3つ紹介していきます。
(参考:厚生労働省 令和元年版過労死等防止対策白書 第1章3項 自殺の状況より)
1位:仕事疲れ
最も自殺の原因となっているのは、過労による疲れです。度が過ぎた残業や休日出勤が重なると、ストレスと疲れにより人は抑うつ状態になってしまいます。
部下に十分な休息を与えているでしょうか。無理をさせていると感じているようでしたら、注意が必要です。
2位:職場の人間関係
2番目に多いのが、職場の人間関係の悩みです。職場でのいじめや仲間外れは、深刻な社会問題の一つです。
人間関係にわだかまりがあると、生産性にも大きな影響を及ぼします。個々にヒアリングを行う等、適切な対処を行いましょう。
3位:仕事の失敗
3番目に多いのが、仕事の失敗が原因となったものです。これは仕事の失敗というよりも、失敗をした事によって上司に怒られるのが怖いから、と考えられます。
部下の失敗を厳しく怒ってはいないでしょうか。あまり厳しくし過ぎると部下は委縮してしまい、精神的に参ってしまいます。
部下の自殺を防ぐ方法①過大な要求をしない
過大な要求とは、部下の能力を著しく超えた業務を強いる事です。多大な業務量を強いられた部下は、残業や休日出勤で埋め合わせをせざるを得ず、過労の原因となってしまいます。
部下の能力を正確に把握し、それぞれの能力に合わせた業務を割り振ることも、管理職に求められる能力です。
長時間の労働が常態化している場合、業務改善の提案をする必要もあります。それでも業務改善がなされない場合、厚生労働省の全国労働基準監督署に訴えることも検討してください。
部下の自殺を防ぐ方法②休むことを提案する
部下が心に大きな負担を抱え、精神的に参っているようなら、休息を取るように勧めましょう。無理して仕事を続けさせてもストレスからミスを起こし、それが原因で上司に怒られて…といった悪循環に陥ってしまいます。
そういった悪循環に陥る前に、休息を取らせるとこによって、心身ともにリフレッシュした状態で仕事に打ち込んで貰った方が良いですよね。
部下の立場からすれば、自分から休暇を申請するのは勇気のいる事です。ぜひ、上司であるあなたから声をかけてあげて下さい。
部下の自殺を防ぐ方法③無理やり飲み会やイベントに誘わない
アルハラという言葉がある通り、部下を無理やり飲み会等のイベントに誘うことも避けましょう。
飲み会も社会勉強の一つだ、という声もあるかもしれませんが、部下にとっては仕事が終わった後の自由な時間を奪われることになるのです。
それに、部下の立場からすれば上司と一緒にお酒を飲むということは、相応に気を使います。仕事で疲れている上に無理やり飲み会に連れて行かれたのでは、部下もうんざりしてしまいますよね。
部下の自殺を防ぐ方法④コミュニケーションを取る
部下と適切なコミュニケーションを取ることも、自殺の防止に効果的です。コミュニケーションが不足している場合、職場の風通しが悪く、人間関係が悪化している可能性があります。
部下との信頼関係が深まれば、自発的に悩みや問題を打ち明けてくれるようになりますよ。
可能な限り、職員ひとりひとりと向き合える時間を作りましょう。部下と信頼関係を築く方法は、こちらの記事でもまとめています。是非参考にしてください。
部下の自殺を防ぐ方法⑤人格否定をしない
部下が失敗をしてしまった時、最もしてはいけない事が人格否定です。ここで言う人格否定は、個性や信念を否定するような言動が当たります。
部下も人間なので、ミスや失敗をするのは当然です。部下が仕事の失敗をしてしまった時に感情のままに怒るのは、部下にとって非常にストレスになってしまいます。
頭ごなしに叱りつけるのではなく、原因の追究と再発防止策の提示をさせるのが上司としての務めです。
うつ病の疑いがあるなら、すぐに医療機関に診察を
部下が精神的に追い詰められており、うつ病の疑いがあるようなら、医療機関に診察を受けさせる必要があります。誤解されがちですが、うつ病は休息だけでは改善しません。
ストレスによる脳の機能障害であり、病気の一つなのです。うつ病の治療に関しては、診療内科ではなく精神内科の診断を受けなくてはなりません。
こちらのサイトでお近くの精神内科を探すことが出来ますので、是非ご活用ください。
部下の自殺に対し、上司がすべき事まとめ
今回の記事では、部下が自殺してしまった時の責任と対処法、自殺を未然に防ぐ対策について解説しました。それぞれポイントごとにまとめると、このようになります。
- 損害賠償の請求
- 企業の社会的信用の低下
- 社内の人間関係の悪化
- 社員の体調不良
- 自殺の連鎖
- 過大な要求をしない
- 休息の提案をする
- 無理やり飲み会等に参加させない
- コミュニケーションを取る
- 人格否定をしない
従業員の自殺は単純に労働力が低下するだけでなく、会社の信用にも関わってくる非常に深刻な問題です。そしてそれ以上に、部下も一つの「命」です。絶対に自ら死を選ぶような選択をさせてはなりません。
この記事を読んだことで、一人でも自殺者が減ることを心よりお祈りしております。